小説「新・人間革命」 7月29日 敢闘48

山本伸一の導師で、勤行が始まった。
 白馬が天空を駆け上がるような、生命の躍動感にあふれた勤行であった。
 伸一は、ここに集った同志が、健康で、長寿で、幸福を満喫し、また、一家が繁栄するよう真剣に祈念した。
 勤行が終わると、皆、生命が洗い清められたような、すがすがしい思いがした。
 伸一は、再びマイクに向かった。
 「九州総合研修所に来るたびに、皆さんには、大変にお世話になっていますので、今日は、御礼に伺いました。
 法華経には、『現世安穏、後生善処』(現世安穏にして、後に善処に生ず)とあります。
 しかし、広宣流布の道には、さまざまな難が競い起こってきます。また、人生は、宿命との戦いともいえます。
 現世安穏というのは、なんの波風もない、順風満帆の人生を生きるということではありません。怒濤のように諸難や試練があっても、勇敢に、一歩も引かずに戦い、悠々とそれを乗り越えていける境涯をいいます。
 何があろうが、堂々と、人生に勝利していける姿が、現世安穏ということなんです。途中は、いかに波瀾万丈でも、それを勝ち越え、晩年に、しみじみと、わが人生は現世安穏なりと、実感していくことが大事です。
 そのためには、どんなことがあっても、一生涯、学会から、御本尊から離れず、題目を唱え抜いて、勇んで、広宣流布に生き抜いていくことです。
 大聖人は、『南無妙法蓮華経と唱うるより外の遊楽なきなり』(御書一一四三ページ)と仰せです。たとえ、どんなに苦しい時も、御本尊への信を奮い起こし、絶対に負けるものか!と、唱題し抜いていくんです。
そうすれば、苦難に立ち向かう勇気がわきます。生命が躍動し、歓喜が込み上げてきます。そこから、すべての状況が開かれていくんです。
 題目、題目、題目です。誰も見ていなくとも、日々、懸命に祈り抜いていく――それが、一切の原動力です」