小説「新・人間革命」 7月30日 敢闘49

山本伸一は、皆が信心の大功徳を受けてほしかった。ゆえに、その源泉となる、唱題の大切さを力説していったのだ。
 「唱題根本に、広宣流布に生き抜いていくならば、来世も、願ってもない最高の境涯で、御本尊のもとに生まれ合わせることができる。つまり、後生善処ということです。
 また、信心を貫いていくならば、死も決して恐れることはありません。
 日蓮大聖人は、『命のかよはんほどは南無妙法蓮華経・南無妙法蓮華経と唱えて唱へ死に死るならば』(御書五〇五ページ)――釈迦、多宝、十方の諸仏が、瞬時に飛び来って、守ってくださると仰せです。
 信心が強盛ならば、生きている時も、死後も、御本尊に守られ、幸福と歓喜の大道が続くことは間違いありません。
 世相は、大変に厳しい状況です。しかし、皆さんは、何があっても、唱題第一に、生命力豊かに、堂々と、朗らかに、勝ち進んでいただきたいと、心からお願いし、私の話といたします」
 唱題あるところには、勇気がわく。歓喜があふれる。確信がみなぎる。そこに、功徳の大輪が咲く。それがまた、さらに、勇気、歓喜、確信を生む。一切は、唱題から始まるのだ。
それを、万人に教え、知らしめるために、創価学会があるのだ。
 唱題第一に、共に広宣流布へ前進することを誓い合った参加者は、頬を紅潮させ、笑顔で伸一を見送った。
 帰りの車中、彼は、同行の幹部に語った。
 「八月二十四日――この日に、会員のお宅を回ることができた。一番大事なことができたと思っている。幹部は、どんなに忙しくとも、第一線の同志のことを、片時も忘れてはならない。
常に、同志に会い、激励し続けるんだ」
 周恩来総理は、「われわれの活動はすべての人民のためのものである」(注)と語っている。それは、人類の幸福のために立ち上がった、わが創価広宣流布運動の心でもある。
 
■引用文献:  注 『周恩来選集』森下修一編訳、中国書店