小説「新・人間革命」 7月31日 敢闘50

九州総合研修所での、山本伸一の敢闘は続いた。八月二十五日には、男子部、学生部の中核メンバーで結成された、人材育成グループ「伸一会」の集いに出席した。
 食事をしながらの懇談であった。
 伸一は、同じ円形テーブルに着いた十人ほどのメンバーの、近況報告などに耳を傾けながら、種々、指導を重ねた。
 「昨日は、私の入信記念日でしたが、二軒のお宅を訪問し、一人ひとりを真剣に激励してきました。
君たちも、誰が見ていようがいまいが、一兵卒となって、会員のために汗を流し、懸命に励まし、学会を守り抜いていくという姿勢を、忘れないでいただきたい。
 諸君は、既に学会の中核であり、これから多くの人が、さらに、副会長などの要職に就いていくでしょう。
さまざまな権限をもつようにもなるでしょう。最高幹部になっていくのは、学会を守り、会員に奉仕し、広宣流布に尽くしていくためです。
 しかし、なかには、最高幹部という地位を得ること自体が目的となったり、自分の野心を実現するために、学会を利用しようとする人間も出てくるかもしれない。
もしも、そうした人間に、いいようにされたら、学会の正義は破壊され、仏法は滅びてしまう。純粋な学会員がかわいそうです。
 君たちは、そんな人間に、絶対になってはならないし、そうした人間がいたならば、徹底して戦うんです。
 また、金銭の不正、飲酒、異性の問題などで、人生の軌道を踏み外すことのないよう、自らを厳しく戒めていかなければならない」
 厳しい口調であった。伸一は、未来のために、青年たちの胸中深く、信仰の王道を打ち込んでおきたかったのである。
 「学会も組織である限り、皆が皆、中心者になるわけではない。脚光を浴びる立場から外れる場合も、当然ある。実は、その時に、人間の本性が現れ、真価がわかる。
 それをきっかけに、組織から遠ざかり、やがて、離反していく者も出るかもしれない」