小説「新・人間革命」 8月2日 敢闘51

山本伸一のテーブルにいるメンバーは、緊張した顔で、彼の話を聞いていた。
 「自分に光が当たらなくなると、離反はせずとも、ふてくされたり、勝手な行動をとる者、傍観者を決め込む者も出るでしょう。
 私は、戸田先生の時代から、傲慢な幹部たちが堕ちていく姿を、いやというほど見てきました。地道な活動をせず、威張りくさり、仲間同士で集まっては、陰で、学会への批判、文句を言い、うまい儲け話を追い求める。
そういう幹部の本質は、私利私欲なんです。
 結局、彼らは、金銭問題等を起こし、学会に迷惑をかけ、自滅していきました。皆、最後は惨めです。仏罰に苦しんでいます。
 仏法の因果は厳しい。人の目はごまかせても、仏法の生命の法則からは、誰人も逃れられない。
 人間革命、宿命転換、一生成仏のための信心です。それには、見栄、大物気取り、名聞名利の心を捨てて、不惜身命の精神で戦う以外にない。
広宣流布への師弟不二の信心を貫き通していくことです。遊び、ふざけなど、絶対にあってはならない」
 伸一は、祈るような思いで語っていった。
 「生涯、一兵卒となって、広宣流布のため、同志のために、黙々と信心に励んでいくことです。
唱題に唱題を重ねながら、会員の激励に、座談会の結集に、機関紙の購読推進に、弘教に、地を這うように、懸命に走り回るんです。それが仏道修行です。
それ以外に信心はない。勇ましく号令をかけることが、信心だなどと、勘違いしてはならない。
 模範の一兵卒たり得てこそ、広布の大リーダーの資格がある。私は、君たちが五十代、六十代、七十代……と、どうなっていくか、見ています。
人生の最後をどう飾るかだよ。大事な、大事な、中核の『伸一会』だもの、創価の師弟の大道を全うして、広宣流布の歴史に名前を残してほしい……」
 彼の「伸一会」への期待は大きかった。一人も堕ちていくような人間を出したくなかった。だから、信仰の王道を訴えたのだ。