【第3回】  「仕事と信心」 ㊦ 2010-2-18

御聖訓 天晴れぬれば地明らかなり
仏法は最高の人間学
諸君は時代を照らす希望の太陽
 
熊沢女子部長 今、各地の友と語り合う中で、「仕事が忙しくて、なかなか思うように学会活動の時間がとれない」という悩みを多く聞きます。
 
池田名誉会長 多忙な中で、少しでも広宣流布のために行動しようと挑戦する。その心が尊い。たとえ短時間でも、勇んで活動に取り組めば功徳は大きい。むしろ、困難な環境の中でこそ成長できるのです。御書に「極楽百年の修行は穢土の一日の功徳に及ばず」(329ページ)と御約束の通りです。大事なのは、心が広宣流布へ向かっていることです。「きょうは学会活動に行けないけれども、すべて信心の戦いと思って、仕事に全力を尽くそう」「休日は会合に参加できるよう頑張ろう」「皆の前進のために一分でも題目をあげよう」ーそう思えれば、勝利です。その強き一念があれば、諸天が動いて、必ずいい方向に進んでいく。ともあれ、皆、さまざまな事情がある。リーダーは一人一人の状況をよく聞いて、全員が勇気と希望をもって前進できるよう、具体的な励ましを送ってほしい。
 
棚野男子部長 池田先生が男子部の第1部隊の部隊長として、下町を奔走された時の歴史をうかがって仕事が忙しくて、会合に来られない部員さんのために、先生は自転車で路地裏を駆けめぐって足を運ばれました。一緒に銭湯に行って語り合われたり、残業の多い友のため、日曜日に先生のご自宅で懇談をされたり。そうした体当たりの激励によって、無名の青年が一人また一人と、広布の第一級の闘士に言っていったのですね。
 
名誉会長 心は心に通じます。一言の励ましでも、それが一生の支えになる場合もある。だから、リーダーは「声を惜しまず」語ることです。私は東京と大阪を往復する夜行列車でも、励ましの葉書を綴りました。今のように、携帯電話やメールなど、なかったんだよ(笑い)。ともあれ、若い柔軟な頭を使ってエ夫すれば、友を励ますことはいくらでもできる。
 
熊沢 仕事と学会活動の両立については、先生の奥様も『香峯子抄』で、「『両立』へ努力することが、将来になってみますと、自分自身の境涯を広げ、福運を積み、生活力、生命力となって、人生を大きく開いていく礎になることは、確かだと思います」と語ってくださっています。私たちにとって、大きな励ましであり、手本です。
 
名誉会長 私と対談集を発刊した「欧州統合の父」クーデンホーフ・カレルギー伯爵も、「現実に一歩前進することは空想で何千歩進むより以上の価値がある」と言われていた。今いる場所で、勇気をもって一歩を踏み出していくのです。そこから開ける。
 
自身が妙法の当体
 
熊沢 仕事柄、寮生活などで、御本尊を御安置できないという悩みをもったメンバーもいます。
 
名誉会長 かつて戸田先生に、入会まもない女子部員が「『南無妙法蓮華経』の意味について教えてください」と質間をしたことがあった。先生は、満面に笑みを浮かべて答えてくださった。「いい質間だね。南無妙法蓮華経とは、つきつめれば、日蓮大聖人の御命と断じてさしつかえない。大聖人の御生命が南無妙法蓮華経ですから、弟子たるあなたの生命も同じく南無妙法蓮華経なのだよ。自信をもち、胸を張って、朗らかに生きなさい」自分自身が妙法蓮華の当体です。ゆえに一人として絶対に不幸になど、なるわけがない。御本尊を御安置できるように真剣に祈ることは当然として、信心を貫き、同志と前進するかぎり、何一つ心配する必要はありません。
 
棚野 ところで仏法と世法の関係でいえば、観心本尊抄」には、「天晴れぬれば地明かなり法華を識る者は世法を得可きか」(御書254ページ)と仰せです。
 
名誉会長 妙法を信じ、行ずることによって、仕事や生活など社会のあらゆる営みで思う存分、智慧を発揮して活躍していくことができる。これが仏法の力です。仏法は最高の人間学といえる。目的観や倫理観がますます見失われている現代社会にあって、その深い闇を照らしゆく希望の太陽こそ、君たち創価の青年なのです。
 
棚野 池田先生が対話された、国際宗教社会学会のドブラーレ元会長も、創価学会の特質を、次のように評価しておられました。それは、「宗教にとって最も本質である生の活力・躍動の力がある。勤行はその源泉といえる」「信仰が単に個人の次元にとどまらず、社会的責任、社会的自覚を養い、会員が社会の各分野で活躍している」「自分たちの社会の発展だけを願うのではなく、『地球的規模』で共同体を築く運動を展開している」等の点です。
 
名誉会長 私たちの「仏法即社会」の前進が、文明史のうえからも、どれほど重要か。戸田先生は、「社会に信念の人を。|と言われていました。また「現実社会から遊離した宗教屋には、絶対になるな」「国家、世界に大いに貢献しゆく指導者と育ちゆけと期待された。自分だけの幸福ではない。人々の幸福、社会の繁栄を願い、その実現に尽くすのが真の仏法者です。今の社会には、心が乾き、荒地のようにすさんでしまった人もいる。自分の居場所を失い、闇の中をさまよい苦しむ若者も少くない。皆さんは同世代の人たちに励ましと希望を送りゆく一人一人であってほしい。苦悩する青年の「心の安全地帯」「精神のセーフティーネット(安全網)」と光る存在であってもらいたいのです。「善の連帯」が社会に広がることで、時代を変革することができるからです。
 
忍耐だ!苦境の時こそ勝負
信心とは根を張ること
必ず栄光の花は咲く
 
熊沢 大企業の社長や役員の秘書として活躍し、その明るい人柄と誠実な姿勢で、「学会の女子部は本当に素晴らしいい」と深い信頼を勝ち取っている友もいます。教育、芸術、学術など、あらゆる分野で女子部が生き生きと活躍しています。
 
名誉会長 女子部の持つ使命が、どれほど大きいか。大聖人は「女子は門をひらく」(御書1566ページ)と仰せになられました。アメリカ・エマソン協会の前会長で女性詩人のワイダー博士は、地域や社会で「平和の門」を広げる女子部の活躍を、「皆様と一緒にいるだけで、私は幸福な気持ちになります。団結を強めゆく皆様方の麗しい人間の結びつきこそ『平和の文化』の土台です」と賞讃してくださいました。妙法の乙女が真剣に立ち上がれば、周囲の環境を大きく変えていくことができる。そのためにも、日々の聡明にして爽やかな言動が大事です。
 
熊沢 「教主釈尊の出世の本懐は人の振舞にて候けるぞ」(同1174ページ)と述べられている通りですね。
 
名誉会長 仕事にしても、まずは朝に勝つことです。朝、御本尊に真剣に祈り、満々たる生命力で職場に行くことだ。そして、清々しい声で「おはようございます!」とあいさつをする。
「声仏事を為す」(同708ページ)です。自身の「声」で、皆を元気にする。職場を明るくする。そういう気概を持つことです。遅刻したり、だらしない姿で出勤するようでは、信頼を勝ち取ることはできない。朝に勝つことが、人生に勝つことでず。信頼厚き存在に名誉会長今は乱世です。皆は、断じて負けてはいけない。自分が強く、賢くなることです。力をつけることです。大聖人門下の池上兄弟は、鎌倉幕府の建設・土木事業を担う家柄の出身です。ところがある時、周囲の讒言によって、鶴岡八幡宮の再建工事の担当から外されてしまった。いわば自分の仕事を失ったわけです。がっくりと肩を落としたであろう兄弟に対し、大聖人は
このことは「天の計らいであろうか」(同1107ページ、趣意)と励まされています。「あなた方のために、深い意味があるのです」との仰せと拝せましよう。そして「造営のエ事から外されたことをうらむような様子を見せてはならない」「(作業道具の)のこぎりや、かなづちを手に持ち腰につけ、常に、にこやかな姿をしていなさい」(同ページ、趣意)と御指導されています。
思うようにいかないことがあっても、へこたれてはならない。くさってはならない。卑屈になってもならない。忍耐強く、根を張って時を創ればよいのです。信心とは、現実の大地に「幸福の根を張ること」です。やがて必ず芽が出て、爛漫たる花が咲く、栄光と勝利の春が来ます。学生部など就職活動で苦闘する友もいるだろうが、頑張ってほしい。
 
棚雪 皆で励まし合い、朗らかに前進していきます。
 
名誉会長 大聖人は、苦難と戦う四条金吾に対し、「主の御ためにも仏法の御ためにも世間の心ねもよかりけり・よかりけりと鎌倉の人人の口にうたはれ給へ」(同1173ページ)と励まされました。仕事の次元においても、仏法の次元においても、社会の次元においても、依怙依託と仰がれる大勝利者になるーこれが信仰の真髄の力です。「人間革命」の光なのです。
 
クーデンホーフ・カレルギー伯癖の言葉は、鹿島守之助訳『実戦的理想主義』鹿島研究所出版会から。