【第7回】 立正安国の旗(下) 2010年 4月30日

立正安国は平和の建設 人間の可能性の開花
信念の言葉が時代を変える
前国連事務次長 学会は人類の夢を実現する団体
 
「聞く」=相手を尊敬すること
友の悩み 疑問を知る対話の名手に
 
御聖訓 命に及ぶ大難にもいまだこりず候
 
粘り強い不屈の前進を
 
広宣流布のための行動にこそ宿命転換がある。不動の幸福への道がある
 
棚野男子部長 東京のヤング男子部の友から、次のような体験を聞きました。 彼は、友人への対話に懸命に挑戦していました。ある時、先輩から「友人の深い理解を勝ち取るためには、まず自分が友人の真の理解者になることが大切だよ」と言われて、ハッとしたそうです。  それまでは「自分の話を聞いてほしい」との思いばかりが先立っていた。でも「友人が悩み、考えていること」を理解しなければ、本当の友情は結べないのではないか、と。 それからは、まずは相手の話を聞こうと決めました。そうすると、友人は不思議と彼の話にも耳を傾け、学会の活動にも興味を持ってくれるようになりました。 その結果、職場の友人が4人、青年部幹部会に参加し、深く感動。聖教新聞を購読する人も出てきました。
 
池田名誉会長 ヤング男子部の健闘は頼もしいね。 対話に挑戦しているということ自体が、尊き「立正安国」の行動です。対話が思うように進まない時もあるかもしれない。 しかし、くよくよすることはありません。壮年や婦人の先輩方も失敗を重ね、それでも実践を貫いて「対話の名手」となってきた。最初からうまくいったら、鍛えられないじゃないか(笑い)。 ともあれ、どんな人も「話を聞いてもらいたい」「悩みをわかってほしい」と思っている。話を聞いてくれれば、それだけでうれしい。心の重しがとれる。元気が出るものです。 以前、お会いした「核戦争防止国際医師会議(IPPNW)」共同創設者のバーナード・ラウン博士は、医療は「癒しの芸術」「聞く芸術」であり、「正しく聞くことは、まずその人を尊敬することから始まります」と語っておられた。 そして、誠実な対話を通して友情が結ばれれば、そこに「真の心の交流の道」が開かれると結論されていました。
 
熊沢女子部長 最近では、相手の立場に立って話を聞く「傾聴ボランティア」なども活発です。それだけ孤独な人が増え、社会における「対話」が渇望されているのだと思います。
 
名誉会長 人間の心と心を結ぶ、創価の「対話」の運動は、社会的にも実に大きな意義を持っている。 「立正安国論」も客と主人の「対話」です。語らいは、社会の混乱と人々の不幸を嘆く客の言葉から始まります。 主人が、その「憂い」と「疑問」に、誠実に耳を傾ける形で、対話は展開されていきます。
 
祈りがあれば必ず相手の「仏性」に届く
棚野 本当に仲のよい友人であっても、仏法や学会の理念について語った時に、なかなか聞いてくれないこともあります。
 
名誉会長 「立正安国論」の中でも、主人が誤った思想を正して、客が色をなして怒る場面があります。 客は、ついに「もう我慢できない。私は帰る!」と席を立とうとする(笑い)。
 
棚野 ふつうなら「すいません、言い過ぎました」と謝るか(大笑い)、「帰れ! 帰れ!」とケンカ別れになりそうな場面です(爆笑)。
 
名誉会長 でも主人は、微笑みながら、客をとどめます。そして、客の心情もよく理解した上で、理路整然、諄々と正義を語っていきます。 主人の大慈悲と確信に満ちた言葉、道理を尽くした説明に、客も最後は納得する。ついには、「唯我が信ずるのみに非ず又他の誤りをも誡めんのみ」(御書33ページ)と、主人と共に立正安国のために行動していくことを決意するのです。 まさしく「立正安国論」には、「対話の王道」が示されているといってよい。
 
熊沢 池田先生はこれまで平和と共生の世界の実現へ、宗教や信条の差異を超えて、世界の指導者や識者と対話を繰り広げてこられました。 こうした軌跡は、まさに現代における「対話の王道」の金字塔であると思います。
 
名誉会長 牧口先生は語っておられた。 「物や金でつながった交際は、下の友情である。就職の世話をしたり、仲良くするのは、中の交際。友人のために悪を取り除き、忠告できるのが、上の友情である」と。
 友のためにと思って、仏法の正義を語った言葉が、反発を受けることもある。しかし、その心は必ず伝わる。 大事なことは、その対話に強く深い「祈り」を込めていくことです。「祈り」のこもった言葉は、必ず相手の生命の内奥の「仏性」に届きます。 相手が自覚しようがしまいが、必ず「仏性」を薫発していきます。祈りがあるから「声仏事を為す」(御書708ページ)となるのです。 勇気凛々と、わが信念を叫んでこそ、青年です。相手がどうあれ、「立正安国」という最極の正義の対話の実践です。自信満々と朗らかに語り切っていけば、勝利です。
 
現代の「一凶」とは
棚野 青年部では本年、「核兵器禁止条約」の制定を求める署名運動を全国各地で展開し、核兵器廃絶への大きな波動を起こしてきました。 この署名は、5月にニューヨークで開催される「核拡散防止条約(NPT)」再検討会議に合わせて、国連に提出される予定です。
 
名誉会長 うれしいね。皆さんの奮闘の様子は、よくうかがっています。 「核兵器の廃絶」など学会の平和運動や国連支援の取り組みは、立正安国の現代的な展開の一つです。
 
熊沢 池田先生はこれまで、「核兵器廃絶」への提言を繰り返し発表してこられました。また米ソなど核保有国の首脳や国連の事務総長と何度も会見され、「核の脅威なき時代」の構築へ行動されてきました。 私たち青年部の平和運動は、こうした先生の取り組みを受け継ぐものです。
 
名誉会長 「立正安国論」で日蓮大聖人は仰せです。 「若し先ず国土を安んじて現当を祈らんと欲せば速に情慮を回らしいそいで対治を加えよ」(同31ページ) 大聖人が烈々たる気迫で権力者を諫められたのは、ひとえに民衆の幸福と平和を願われたからです。具体的には、「他国侵逼難」「自界叛逆難」という「戦乱」を断じて起こしてはならない、との叫びであられた。 戦争は、人間性を根幹から破壊する。ましてや一瞬にして数十万の人々の生命を奪い、地獄の苦しみへと突き落とす核兵器は、魔性の産物以外の何ものでもありません。 また、もし核戦争が起これば、人類そのものが滅亡しかねない。
 
熊沢 戸田先生は「原水爆禁止宣言」で、核兵器を使用し、人類の生存の権利を脅かすものは「魔ものであり、サタンであり、怪物であります」と喝破されました。
 
名誉会長 そうです。戸田先生は、「その奥に隠されているところの爪をもぎ取りたい」と言われたのです。 先生が凝視しておられたのは、人間の心の奥に潜む「生命軽視」の魔性であった。 大聖人は、この正体を「元品の無明は第六天の魔王と顕われたり」(同997ページ)と断じられている。 「元品の無明」とは、生命にそなわる根源的な無知であり、ここから人間の尊厳に対する不信や、他者の生命への蔑視が生まれます。 真の平和建設を阻む現代の「一凶」とは、この「元品の無明」にほかならない。 「元品の無明を対治する利剣は信の一字なり」(同751ページ)と仰せのごとく、この「一凶」を打ち破る力こそ、「万人の尊厳」を説き明かした妙法の大哲学です。この理念を広げ、時代精神へと高めていくことこそ、恒久平和を実現する道なのです。
 
世界の識者が期待
熊沢 最近、ある女子部のメンバーから質問を受けました。それは「立正安国の戦いには到達点はあるのでしょうか」というものでした。
 
名誉会長 皆、一度は考える問題かもしれない(笑い)。でも「立正安国」は結局、人間生命の変革の戦いです。仏と魔の戦いは止むことがない。その意味では永遠の闘争といえます。 他者のため、平和のためという「立正安国」への行動があってこそ、真実の仏法の実践といえる。 そこに自身の一生成仏があり、宿命転換がある。自他共に揺るがぬ幸福を確立しゆく道が開かれます。 ただ、その途上には、幾多の障魔が競い起こることは必定です。 大聖人の御闘争も苦難の連続でしたが、その戦いは、まさに「能忍(能く忍ぶ)」という究極の粘り強さに貫かれていました。
 
棚野 松葉ケ谷の法難や伊豆流罪、竜の口の法難、さらには佐渡流罪など、大難に続く大難を大聖人は、すべて敢然と乗り越え、勝ち越えられました。
 
名誉会長 大聖人は厳然と仰せになられました。 「此法門を日蓮申す故に忠言耳に逆う道理なるが故に流罪せられ命にも及びしなり、然どもいまだこりず候」(同1056ページ)と。 すさまじい気迫です。偉大なる師子吼であられる。 不二の弟子である日興上人も、大聖人の立正安国の魂を厳然と受け継がれました。 大聖人滅後も、日興上人は幕府や朝廷への諫暁をたびたび行われています。「日蓮聖人の弟子 日興」と明記された諫暁の書を、師が著された「立正安国論」に添えて提出されたのです。 これに対して五老僧は、自らを「天台沙門(天台宗の僧侶)」等と名乗った申状を幕府に提出した。弾圧を恐れた、卑劣な保身の姿でした。
 
棚野 日興上人、日目上人の後、「立正安国」の精神は、宗門のなかで急速に失われていきます。やがては、民衆救済の目的と活力をなくしてしまいました。
 
名誉会長 歴史の闇に埋もれていた「立正安国の大精神」を現代に生き生きと蘇らせたのが、大聖人正統の創価学会なのです。 立正安国の道は平坦ではない。山もあれば、谷もある。 迫害の波浪が荒れ狂う時もあれば、苦難の烈風が吹きつける時もある。ゆえに、途中に何があっても、あきらめず、へこたれず、明るく進み続けることです。大聖人直結の「師弟不二の信心」がある限り、立正安国の大理想は必ず実現していくことができる。 人間一人一人の生命の可能性を最大に開花させ、平和へと進みゆく私たちの運動に、世界の識者も大きな期待を寄せてくださっています。
 
熊沢 国連のチョウドリ前事務次長は、池田先生の国連支援に最大に感謝されながら言われました。 「民衆自身の力を開発する創価の運動は、まことに重要です。SGI(創価学会インタナショナル)は、平和と人間の開発のために力を尽くす人々の集まりです。まさに、人類の夢を描き、夢を実現する団体なのです」
 
名誉会長 立正安国は、人類の夢の実現です。悲願の達成です。若き諸君は、その目標に向かって、一日一日を勝ち進んでほしい。 「立正安国」の実践に徹する時、仏の力を出すことができる。人間は最も強くなれる。 大聖人の「立正安国」の大宣言から750年――。 これほどの晴れ舞台はありません。自分自身の人間革命に挑みながら、大いなる「正義の勝利の大連帯」を社会に、世界に広げていってもらいたいのです。