【第10回】 異体同心の前進(上)2 2010-6-18

桜梅桃李の輝きを
 
名誉会長  重要な視点です。あくまでも「異体同心」であって「同体同心」ではない。皆、それぞれ大切な個性がある。職業も違う。年齢や性別、性格も、千差万別です。 今、私が対談を進めている中国文化界のリーダー・高占祥先生は、「敬其所異(其の異なりを敬う)」こそ、進歩の鍵であると語っておられた。異なるからこそ、学び合い、生かし合い、より大きな力を出していけるのです。 「御義口伝」には「桜梅桃李の己己の当体を改めずして」(御書784ページ)とあります。それぞれの持ち味を、最大限に発揮していけるのが大聖人の仏法です。 「異体同心の団結」は、一人一人がわが使命の舞台で最高に輝きながら、広宣流布という無上の目的へ共に前進するなかで生まれる。それは人から言われてではない。「自発能動」の団結であり、「自体顕照」の連帯です。 どこまでいっても大事なのは、一人一人の幸福です。人生の勝利です。「一人の宿命転換」「一人の成長」が一切の根本なのです。
 
「共に仏道を成ぜん」
 
阿部 どこまでも「一人」を大切にし、苦楽を共にするのが創価の世界ですね
 
名誉会長 御書には「松栄れば柏悦ぶ芝かるれば蘭なく情無き草木すら友の喜び友の歎き一つなり」(934ページ)と仰せです。 友の喜びを、わが喜びとする。友の活躍を心から讃えていく。苦難の時は一緒に悩み、励ましを送る。共に笑い、共に泣いて、人生の幾山河を越えていく。この人間性輝く、温かな結合に、真の「異体同心」が生まれるのです。 戸田先生は、わかりやすく言われていた。 「君も苦労しているか、君も貧乏しているか、君も苦しいか、お互いに信心を奮い起こそうではないか――これを異体同心というのです」と。大聖人が若き南条時光に教えられた法華経の一節に、「我等と衆生と皆共に仏道を成ぜん」(同1561ページ)とあります。 「皆共に」です。皆で仏道修行をし、共に向上していこう、勝利していこうとの誓願があれば、おのずと「異体同心」になるのです。 
 
棚野  私たちは、池田先生から「一人への励まし」に徹する心を教わりました。
 
名誉会長  それが仏法だからです。来る日も来る日も、私は「一人」を励ましてきました。何十万人、何百万人と激励し続けてきました。 私の願いは、全同志が幸福になることです。勝利の人生を胸を張って前進することです。そのために、私は生きてきたし、戦っているといってよい。創価の「異体同心の和合僧」は、この不惜身命の闘争の結実なのです
 
 永遠の「将軍学
 
熊沢  「一人を大切にする」といえば、伊藤関東女子部長のお父さんは、長年、未入会でした。じつは以前、伊藤さんは、この点について、先生に直接、聞いていただく機会がありました。その時に先生から、「お父さんに心配かけちゃいけないよ」「お父さんに『大好き』って言うんだよ」(笑い)と激励していただいたことが、自分を見つめ、変えていく大きな原点になったそうです。 以来、お母さん、妹さんとも心を合わせて祈り、お父さんをもっと大切にしようと心がけてきました。やがて、お父さんも「信心するよ」と決意をされました。入会後、お父さんは、一人のために献身する多くの同志の姿に触れ、深く感嘆されていたとうかがいました。 
 
名誉会長  本当に良かったね。「心こそ大切」です。相手を思う真心、真剣な祈りは必ず通じていく。そして、大切なのは「声」です。「言葉」です。 御書には「言と云うは心の思いを響かして声を顕すを云うなり」(563ページ)と仰せです。「慈愛の声」「正義の声」「確信の声」が、相手の心を動かしていくのです。  ともあれ、有名な「異体同心事」で大聖人は仰せです。 「異体同心なれば万事を成し同体異心なれば諸事叶う事なし」(御書1463ページ) 「日蓮が一類は異体同心なれば人人すくなく候へども大事を成じて・一定法華経ひろまりなんと覚へ候」(同ページ) どんなに人数が多くとも、どんなに権勢を誇ろうとも、心がバラバラでは勝利を得ることはできない。反対に、たとえ人数が少なくても、各人が広宣流布へ「心」を合わせる「異体同心の団結」があれば、万事を成すことができると結論されている。
 
阿部 大聖人は続けて、「悪は多けれども一善にかつ事なし」(同ページ)と仰せです。「一善」とは「根本の正義」ですね。
 
名誉会長 そうだ。妙法流布に生きゆく仏の軍勢が最後に勝つことは、御聖訓に照らして絶対に間違いない。そのために大切なのは「前進」です。「勢い」です。70万騎という殷の大軍に、わずか八百諸侯の周が打ち勝った中国の故事もそうでした。殷の兵士たちの心は定まっていなかった。その迷う心が、周の精兵の勢いに揺り動かされて、形勢が一気に逆転したのです。 「攻め抜く」「動き抜く」なかで、味方が広がり、真の団結が生まれる。「断じて勝つ」と決めて死力を尽くす時、本当の「異体同心」が鍛え上げられる。受け身では、「同心」とはならない。だからこそ、まず決意した「一人」が立ち上がることが、「異体同心」の起点となる。リーダーが真剣に祈り、率先して行動する。この敢闘精神の勢いが波動を広げる。戦いの中で、皆が心を合致させて祈り、大いに励まし合いながら、「異体同心の前進」を加速していくならば、どんな壁も破ることができる。この「異体同心の将軍学」を、今こそ、わが青年部は会得してほしいのです。(下)に続く)