小説「新・人間革命」 母の詩 43 11月22日

子どものなかには、難病にかかって、生まれてくる子もいる。その宿命に真正面から向き合うことは、親にとっても、あまりにも辛く、苦しいことにちがいない。
 しかし、皆が尊極の「仏」の生命をもち、偉大なる使命をもって誕生しているのだ。
 ある婦人は、生まれた三女がダウン症候群で、しかも、心臓に二つの穴が開いていることを医師から告げられた。
心臓の手術は成功するが、ダウン症候群とは、生涯、向き合わなければならない。しかし、母親は、使命ある子なのだと、一心に愛を注いだ。
 小学校六年の長女も、二年の次女も、みんなで妹を大切に育てようと心に決めた。
 その三女が、笑うと、長女の顔にも、次女の顔にも笑みの花が広がった。
 母は、思った。この子は、既に姉妹の心を一つにしてくれている。深い、深い使命をもって生まれてくれたんだ!と。 
三女が、何かしゃべったり、寝返りを打ったり、おもちゃで遊んだりするたびに、家族は、皆、拍手をして喜び合う。
 次女は、作文に、「(ダウン症候群の妹が)がんばっている姿を見るだけで、私は勇気がわいてきます」「私に『何でもあきらめちゃだめだ!』って教えてくれたような気がします」「じまんの妹です。
これから、どんなことがあっても、お姉ちゃんとして守ってあげようと思います」と書いている。
 長女もまた、「手術も乗り越え、みんなを喜ばす天使的存在の妹が、ほこらしく思えます」と作文に記している。
 なかには、生まれて間もなく、病などによって、早世する子どももいる。
しかし、生命は永遠である。今世で妙法に巡り合えたこと自体が、宿命転換の道が大きく開かれたことである。父や母、家族などを、発心させゆく使命をもっての出生ともいえる。
 親子となって生まれてくる宿縁は、限りなく深い。親子は一体である。子の他界を契機に、親が信心を深め、境涯を開くことが、結果的に、その子の使命を決するともいえよう。