小説「新・人間革命」 母の詩 50 11月30日

牧口園の開園式では、「創立の志」をはじめ、「学会精神」「常住」「大慈」「大志」「一人立つ精神」「後継の弟子」など、初代会長・牧口常三郎の文字が刻まれた石の除幕式が一斉に行われた。
 これは、創価の父・牧口の精神を偲ぶ、縁となるものを残したいとの思いから、山本伸一が設置を推進してきたものであった。
 伸一は、開園式で幹部らに言った。
 「この東海研修所には、多くの人たちが、研修のためにやって来る。その時に、牧口先生、そして、戸田先生の精神に触れることができるようにしたいんだよ。
 ここには、牧口先生の胸像も建てよう。また、戸田先生の歌や文字なども残していこう。創価学会の万代の興隆、発展のために、峻厳な師弟の道を学ぶ牧口園にしていきたいんだよ。
 また、ほかの研修所や会館などにも、牧口先生や戸田先生の文字を刻んだ石を設置していこう」
 創価の師弟の精神を永遠ならしめるために、伸一は、心を砕き続けていたのである。
 その牧口園の開園から半年ぶりに、東海研修所を訪れた山本伸一は、九月十五日、牧口常三郎の胸像除幕式に臨んだ。
 代表の手で紐が引かれると、風雪を刻んだ、凛々しき王者の風貌をした牧口の銅像が、初秋の日差しに映えた。
 引き続き、牧口の父母を顕彰し、その名をつけた、「長松の楠」「イネのつつじ」の記念植樹が行われた。
 伸一は、この日、さらに、男子部、学生部の精鋭の研修会に出席した。そのスピーチのなかで、彼は、なぜ先師・牧口常三郎、恩師・戸田城聖を守り、宣揚し抜いていくのかを語った。
 「それは、私どもに、大聖人の仏法を、御本尊を、御書を教えてくださったのは、牧口先生、戸田先生であったからであります」
 師恩を知るところから、弟子の道は始まる。