小説「新・人間革命」 厳護 2 12月8日

山本伸一が、学会本部の隣の建物まで来ると、ちょうど二人の青年が歩いて来た。胸に「G」の字をデザインした金のバッジが光っていた。「牙城会」の青年であった。
 「牙城会」は、学会本部をはじめ、各地の会館の警備などに携わることを任務とした、青年部の人材育成の機関である。
 「『牙城会』のメンバーだね。いつも、ありがとう」
 二人は、東京・杉並区の男子部員で、ちょうど、本部周辺の見回りをしているところであった。
 「これから一緒に、点検して回ろうよ」
 伸一は、先に立って歩きだした。歩きながら、二人の青年の仕事や家族のこと、また、学会の地元組織のことなどを聞いていった。
 仕事も忙しいなか、「牙城会」の任務に就くために、駆けつけて来た丈夫である。
 伸一は、感謝の思いを込めて語った。
 「みんな、大変ななかで頑張ってくれているんだね。ありがたいね。
 でも、広宣流布のため、仏子を守るための活動だもの、その苦労は、すべて大福運となって、自分に返って来るよ。そう信じて戦い抜く人が仏法者だ。また、その人が、最後の勝利者となるんだよ」
 この日は、学会本部での会合はないらしく、行き交う人も、ほとんどいなかった。
 伸一は、建物の窓は開いたままになっていないか、周辺に不審物等がないかなど、丹念に点検しながら、青年たちに言った。
 「『牙城会』には、本部、会館を、学会員を厳然と守る使命がある。それは、私と同じ使命だよ。その使命を果たすんだから、全神経を研ぎ澄ませ、注意力を働かせて、どんな小さなことも、決して見過ごしてはならない。
 注意力というのは、一念によって決まる。事故につながりそうなことを、絶対に見落とすものかという、責任感に裏打ちされた祈りが大事なんだ。
その祈りによって、己心の諸仏諸天が働き、注意力を高め、智慧をわかせていくからだ」