小説「新・人間革命」 厳護 4 12月10日

山本伸一は、さらに、本部周辺の建物を見回りながら、「油断」について、「牙城会」の青年に語っていった。
 「これから年末いっぱい、火災に限らず、詐欺や窃盗などの、さまざまな犯罪が多発しやすい時期になる。しかし、ともすれば、まさか、自分はそんなことに遭うわけはない。大丈夫だろうと思ってしまう。
 実は、それが油断の第一歩であり、そこに、隙が生まれていく。
 また、会合で、交通事故に注意するよう呼びかけても、そんなことは、わかっていると思って、聞き流してしまうケースがよくある。
だが、その時に、そうだ。用心しよう!と自分に言い聞かせ、周囲の人とも確認し合うことだ。そして、自転車を使っている人なら、ライトやブレーキを点検するなど、行動に移していくことが大事なんだ。
 大聖人は、四条金吾に、『かまへて・かまへて御用心候べし』(御書一一三三ページ)、『さきざきよりも百千万億倍・御用心あるべし』(同一一六九ページ)と、細かいところにも気を使い、これまで以上に用心していくように訴えられている。この『用心』こそ、すさんだ社会にあって、身を守り、勝利していくための肝要なんだよ」
 伸一は、「牙城会」の青年と、聖教新聞社を経て、自宅まで来た。妻の峯子が、玄関前に、迎えに出ていた。峯子は、「牙城会」の青年たちに、丁重に礼を言った。
 伸一は、別れ際、彼らに語った。
 「今日は、ありがとう。ともかく、絶対無事故をめざそう。私も、無事故、安全を、毎日、しっかり、ご祈念しているからね。
 私は、いつも君たちと一緒に行動するわけにはいかないが、心は一緒だよ。使命は同じだよ。どうか、私に代わって、本部を守ってください。会館を守ってください。同志を守ってください。また、お会いしよう」
 この日、伸一と峯子は、彼らが、風邪をひかないように、また、はつらつと使命を果たし、立派に大成するように、深い祈りを捧げた。