小説「新・人間革命」 厳護 14 12月23日

一九五一年(昭和二十六年)の一月六日、土曜日であった。
 山本伸一は、業務停止となった東光建設信用組合の残務整理のために、戸田城聖の自宅に呼ばれた。
 四面楚歌の状況であり、一部の債権者は、戸田を告訴さえしていた。事と次第によっては、戸田は、逮捕もされかねない事態にあったのである。
また、新たな活路を求め、戸田が最高顧問となって、大東商工がスタートしていたが、思うに任せぬ状況であった。
 戸田は、妻の幾枝を傍らに置いて、伸一に語った。
 「私に、もし万一のことがあったら、学会のことも、組合のことも、また、大東商工のことも、一切、君に任せるから、引き受けてくれまいか。そして、できることなら、私の家族のこともだ」
 身に余る重責である。二十三歳の伸一は、戦慄と感動のなかで、戸田の言葉を聞いた。
 「君に、とんでもないお土産を残すと思うかもしれないが、私のこの世に生まれた使命は、また君の使命なんだよ。わかっているね。何が起きたとしても、しっかりするんだぞ。
 私と君とが、使命に生きるならば、きっと大聖人様の御遺命も達成する時が来るだろう。誰がなんと言おうと、強く、強く、一緒に前へ進むのだ!」
 伸一は、潤んだ瞳を上げ、戸田に言った。
 「先生、決して、ご心配なさらないでください。私の一生は、先生に捧げて、悔いのない覚悟だけは、とうにできております。この覚悟は、また、将来にわたって、永遠に変わることはありません」
 この日の日記に、伸一は綴った。
 「先生は、正成の如く、吾れは、正行の如くなり。奥様は、落涙。此の日の、感動、厳粛、感涙、使命、因縁、生き甲斐は、生涯、忘るることはない。
 後継者は、私であることが決まった」
 真実の師弟の絆は、最も激しい逆風のなかでこそ、燦然と金色の光を放つのだ。