小説「新・人間革命」 人間教育53 4月18日

山本伸一は、創価学会が永遠に発展し続けていくためには、仏法の根本は何かを見失うことなく、大聖人の御精神という原点に回帰し、人類のために”“民衆のなかへと、弛まざる流れを開いていくことが、必要不可欠であると訴えた。
 そして、創価学会は、本源からの宗教改革、人間革命の運動を展開しており、一人ひとりが、その運動の主役として、社会に大きく貢献していってほしいと呼びかけた。
 最後に彼は、こう語って話を結んだ。
 「先師・牧口初代会長、恩師・戸田前会長をはじめ、学会の草創期を築き上げた先輩の多くは、教育者でありました。
 したがって、第二章の広宣流布、すなわち、世界の平和と文化の本格的な興隆の時代にあっても、教育部は、その先駆者であっていただきたい。
その誇りを胸に、一騎当千の光り輝く主柱へと成長しゆくことを、心から祈っております」
 賛同と決意の大拍手が轟いた。
 文豪トルストイは、「宗教は教育の基礎である」(注)と記している。それは、教育の場に宗教を持ち込むことではない。
 教育には、確たる人間観と幸福確立のための哲学が必要である。それを説いているのが仏法である。また、子どもの可能性を信じ、その幸せのために、どこまでも献身し、奉仕しゆく強靱な意志と情熱が必要である。
この強き一念の源泉は、断じて子どもたちの幸せを築こうとする宗教的使命感である。
 ゆえに、伸一は、教育部員が強盛なる信仰の人となるよう、自身の生命を削る思いで、激励したのである。
 山本伸一は、三月三十日、静岡県の牧口園で行われた、第三東京本部(大田・品川区)婦人・女子部の、教育部研修会に出席した。
 未来のために、今、なすべきことは、すべてなすのだ。時は待ってはくれない。全力を振り絞らずしては、終生、禍根を残す!
 伸一は、必死で戦い抜いていたのだ。
 
■引用文献 注 トルストイ著『文読む月日』北御門二郎訳、筑摩書房