小説「新・人間革命」 人間教育52 4月16日

山本伸一は、キリスト教は苦悩する民衆のなかに入って、戦いを開始していったがゆえに、権力からの迫害を宿命的に背負っていったことを述べた。
 「だが、注目すべきは、キリスト教は迫害を受けるたびに、大きく民衆のなかに広がっていったという歴史的事実であります。
 翻って、創価学会広宣流布の伸展も、迫害と殉教の崇高な歴史とともにありました。初代会長の牧口先生は獄死され、第二代会長の戸田先生も、二年間の獄中生活を送り、学会は壊滅状態になった。
しかし、戸田先生のもとに、本当の弟子が集い、学会は大発展しました。そこに、宗教の信念ともいうべき不屈の栄光の精神があります。
 苦難の烈風に向かい、決してたじろぐことなく、高らかに飛翔を遂げていく――これこそが、学会精神です。その心意気を忘れぬところに、発展と勝利がある。
 また、裏返せば、障害があるからこそ、本当の力を出すことができるし、勝利への大飛躍ができるんです」
 さらに、伸一は、キリスト教世界宗教へと発展したが、中世になると、教会の勢力が増大し、結果的に教会主義に陥り、民衆を権力に隷属させてしまった側面があることに言及していった。
 「教会は常に民衆の側に立つべきであり、神と人間の間に立ちふさがる障壁であってはならない。マルチン・ルターの宗教改革の原点も、まさに、そこにあったといえます。
 また、真実の教会と人間の在り方というものは、集まっては、また、民衆のなかへ飛び込み、あくまでも民衆のため、社会のために貢献しゆく、動的な関係に貫かれていなければならない。
この集合離散ともいうべき方程式こそが、信仰を触発し、精神を高まらしめ、宗教を発展させゆく根本の原理であることを、銘記してほしいのであります」
 民衆のなかへ、ひたすら民衆のなかへ、そして、その生命のなかへ――この粘り強い戦いがあってこそ、勝利があるのだ。