2011-05-01から1日間の記事一覧

小説「新・人間革命」 灯台 10 4月30日

幹部の話は、確信にあふれ、〝なるほど〟と頷けるものがあり、歓喜と感動を呼び起こすものでなければならない。 「てきぱきした対話のない単調な長話は、鈍感を示す」(注)とは、イギリスの哲学者ベーコンの警句である。 会合で、何を、どう話すか――山本伸…

小説「新・人間革命」 灯台 9 4月29日

社会部の合同グループ指導会から一年五カ月後の、一九七七年(昭和五十二年)二月二日、創価文化会館内の広宣会館で開催された東京社会部の勤行集会に、会長の山本伸一が姿を現した。 予期せぬ会長の出席に、場内は大拍手と大歓声に包まれた。 伸一は、この…

小説「新・人間革命」 灯台 8 4月28日

山本伸一は、さらに、「開目抄」の「我日本の柱とならむ我日本の眼目とならむ我日本の大船とならむ等とちかいし願やぶるべからず」(御書二三二ページ)の御文を拝し、確信をもって訴えていった。 「これは、日蓮大聖人が、『私は、日本を支える精神の柱とな…

小説「新・人間革命」 灯台 7 4月27日

山本伸一は、社会部のメンバーの激励に、常に心を砕き続けてきた。 一九七四年(昭和四十九年)の十月上旬、聖教新聞の記者が、見出しの相談に来たことがあった。その紙面に、社会部のグループ長会が報道されるのを知ると、伸一は、自ら見出しの案を示した。…

小説「新・人間革命」 灯台 6 4月26日

社会部などが誕生した一九七三年(昭和四十八年)の十月度本部幹部会では、翌七四年(同四十九年)の学会のテーマを「社会の年」とし、仏法の法理を広く展開し、社会建設に取り組んでいくことが、満場一致で採択された。第四次中東戦争によって、石油価格は…

小説「新・人間革命」 灯台 5 4月25日

「仏法即社会」である。ゆえに、仏法の哲理を社会に開き、時代の建設に取り組むことは、信仰者の使命である。それには、一人ひとりが人格を磨き、周囲の人びとから、信頼と尊敬を勝ち得ていくことだ。 人間革命、すなわち、人格革命こそが、そのすべての原動…

小説「新・人間革命」 灯台 4 4月23日

山本伸一は、聖教新聞の記者に語った。 「日蓮大聖人は、何度も命を狙われ、流罪になっても、微動だにすることなく、『然どもいまだこりず候』(御書一〇五六ページ)と、一歩も引かれることはなかった。 その御言葉には、天をも焦がさんばかりの、燃え立つ…

小説「新・人間革命」 灯台 3 4月22日

山本伸一が学会創立四十六周年の記念行事で語った大野道犬についての話は、小林秀雄の「文学と自分」のなかで紹介されているエピソードである。 ――大坂冬の陣で、徳川家康は大坂城の外堀を埋める条件で、豊臣と和議を結ぶ。しかし、家康は外堀のみならず、内…

小説「新・人間革命」 灯台 2 4月21日

山本伸一は、聖教の記者たちに訴えた。 「戸田先生は、広宣流布の大誓願に生涯を捧げられた指導者でした。 先生は、こうおっしゃっていた。 『私は、創価学会を、愛おしい全同志を、全会員を、断じて守らねばならない。いや、学会員だけではない。全人類を幸…

小説「新・人間革命」 灯台 1 4月20日

人間という真実から 表現を除けば 何が残るか 表現 表現……必然性の表現 已むにやまれぬ表現 これは、山本伸一が、一九七一年(昭和四十六年)九月に、学生部に贈った詩「革命の河の中で」の一節である。 われらは、表現する。 この世で果たすべき、自らの使…

小説「新・人間革命」 人間教育54 4月19日

第三東京本部の婦人・女子部の代表が集った教育部研修会で、山本伸一は、人間教育実践の場について語った。 「御書には、『法妙なるが故に人貴し・人貴きが故に所尊し』(一五七八ページ)とあります。持つ法が最高に優れていれば、それを持つ人も貴い。持つ…

小説「新・人間革命」 人間教育53 4月18日

山本伸一は、創価学会が永遠に発展し続けていくためには、“仏法の根本は何か”を見失うことなく、大聖人の御精神という原点に回帰し、“人類のために”“民衆のなかへ”と、弛まざる流れを開いていくことが、必要不可欠であると訴えた。 そして、創価学会は、本源…

小説「新・人間革命」 人間教育52 4月16日

山本伸一は、キリスト教は苦悩する民衆のなかに入って、戦いを開始していったがゆえに、権力からの迫害を宿命的に背負っていったことを述べた。 「だが、注目すべきは、キリスト教は迫害を受けるたびに、大きく民衆のなかに広がっていったという歴史的事実で…

小説「新・人間革命」 人間教育51 4月15日

山本伸一は、ここで話を転じて、キリスト教が、なぜ、普遍的な世界宗教として発展したのかを考察していった。 「その一つの理由は、キリスト教は、民族主義的な在り方や、化儀、戒律に縛られるのではなく、ギリシャ文化を吸収しながら、世界性を追求していっ…

小説「新・人間革命」 人間教育50 4月14日

新兵器はできても、ドイツの敗戦は、既に避けがたい状況にあった。 フォン・ブラウン博士らは、生命の危険を感じていた。新兵器製作の秘密を知り、その技術をもっている自分たちを、ドイツ軍や秘密国家警察が殺すことも懸念されたからだ。 博士は、ドイツが…

小説「新・人間革命」 人間教育49 4月13日

山本伸一は、フォン・ブラウン博士について語っていった。 ――フォン・ブラウンは、一九一二年(明治四十五年)に、ドイツ東部のビルジッツ(現在のポーランド内)に生まれ、少年時代に宇宙旅行への夢をいだく。 「博士の偉大さは、宇宙旅行を可能にするため…

小説「新・人間革命」 人間教育48 4月12日

一九七七年(昭和五十二年)二月六日、東京・信濃町で創価学園生と懇談した山本伸一は、午後七時半、創価文化会館内の広宣会館で開催されている、東京教育部の第一回勤行集会に向かった。 彼は、二十一世紀を「平和の世紀」「生命の世紀」「人間の世紀」とし…

小説「新・人間革命」 人間教育47 4月11日

〝さあ、これからだ!〟 翌日、北川敬美は、自分に言い聞かせ、学校に行くと、和子が職員室に来た。 「先生、昨日は、すみませんでした」 照れくさそうに言い、そっと、手紙を置いていった。北川は、すぐに目を通した。 「私は、先生の期待をいっぱい裏切っ…

小説「新・人間革命」 人間教育46 4月9日

北川敬美は、和子に、話し合おうと、何度も声をかけた。和子は、「まだ、お弁当を食べていないから」「掃除があるから」と、さまざまな理由をつけて、拒否し続けた。だが、とうとう話し合いにこぎ着けた。 北川は、同情では、和子は変わらないと思った。彼女…

小説「新・人間革命」 人間教育45 4月8日

川敬美は、“自分は、和子の校則違反を見て見ぬふりをすることはやめよう”と心に決めた。また、心のどこかで、“非行少女”のレッテルを貼るようなことも、絶対にすまいと決意した。 そして、自分がいつも見守っていること、成長してほしいと心から願っているこ…

小説「新・人間革命」 人間教育44 4月7日

山本伸一が「教育革命」を誓い合う日にと提案した教育部夏季講習会から一年後の、一九七六年(昭和五十一年)八月十二日には、東京・立川市市民会館で、「青年教育者実践報告大会」が開催された。 人間教育運動を実践してきた青年たちの体験を、活字ではなく…

小説「新・人間革命」 人間教育43 4月6日

青年教育者たちは、自分たちの人間教育運動を知ってもらおうと、第十回教育部総会には、多くの教育関係者を招待した。 青年たちは、運動を推進していくなかで、子どもたちが生き生きとし、目覚ましい成長を遂げていくのを実感してきた。彼らには、自分たちの…

小説「新・人間革命」 人間教育42 4月5日

青年を信じることは、未来を信じることである。青年を育むことは、未来を育むことである――ゆえに、山本伸一は、一心に青年を信じ、その育成に、全身全霊を注いだ。 彼は、場内の青年たちに視線を巡らしながら、こう話を締めくくった。 「どうか、教育部の皆…

小説「新・人間革命」 人間教育41 4月4日

「知」「情」「意」という精神作用を十全に開花させていくには、何が必要か――山本伸一の話は、いよいよ核心に迫っていった。 「それは、『自己の人間としての向上、完成をめざす主体性』であり、また『すべての人に対する慈悲の精神』であります」 この二つ…

小説「新・人間革命」 人間教育40 4月2日

ここで、山本伸一は、スイスの大教育者ペスタロッチが、身寄りのない子どもたちの教育に取り組んでいた時のことを記した、手紙の一文を紹介した。 「わたしは彼らとともに泣き、彼らとともに笑った」(注) ペスタロッチは、身寄りのない子どもたちと常に一…

小説「新・人間革命」 人間教育39 4月1日

山本伸一は、本来、最も優先されるべきは「人間」であるにもかかわらず、戦前・戦中は「軍事」が、戦後は「経済」が優先されてきたことを指摘した。 そして、この順位を逆転させるには、教育という人間の育成作業から、突破口を開く以外にないと訴えた。 ま…

小説「新・人間革命」 人間教育38 3月31日

八月十二日、山本伸一の姿は、創価大学中央体育館の壇上にあった。教育部夏季講習会の全体指導会に出席したのである。 文化本部長の滝川安雄のあいさつに続いて、伸一が登壇した。 講習会には、北海道をはじめ、東日本の教育部の代表約二千人が集っていた。 …

小説「新・人間革命」 人間教育37 3月30日

“イネさん”から、「教育の心」を学んだ木藤優は、日々、クラスの児童のことを思い浮かべては、唱題に励んだ。 そして、次第に子どもたちと心が通い合うようになり、学校を抜け出す子どももいなくなった。クラスは目に見えて変わっていったのである。 山本伸…

小説「新・人間革命」 人間教育36 3月29日

入会した木藤優の面倒をみてくれたのは、紹介者である学友の母親“イネさん”であった。彼女は、平凡な主婦であったが、幾つもの病を乗り越えた体験をもち、限りなく明るく、仏法への確信に満ちあふれていた。 その“イネさん”が、木藤に、信心の基本から、根気…

小説「新・人間革命」 人間教育35 3月28日

木藤優は、やがて、“壁”に突き当たった。担任した五年生のクラスで、学校を抜け出す児童が、後を絶たないのだ。男子二十五人のうち、十五人ぐらいがいなくなってしまうこともあった。 捜しに行くと、近くの河原でたむろしていた。 また、シンナーを吸う子も…