小説「新・人間革命」 人間教育42 4月5日

青年を信じることは、未来を信じることである。青年を育むことは、未来を育むことである――ゆえに、山本伸一は、一心に青年を信じ、その育成に、全身全霊を注いだ。
 彼は、場内の青年たちに視線を巡らしながら、こう話を締めくくった。
 「どうか、教育部の皆さんの手で、『教育革命の大情熱の火を点じてください』『未来社会を潤す人間教育の、豊かな水脈をつくってください』と、心からお願い申し上げ、私のあいさつとさせていただきます」
 決意と誓いの大拍手が轟いた。
 この八月十二日は、「教育部の日」となり、教育部が教育本部となった二〇〇二年(平成十四年)には、「教育原点の日」と定められ、創価の人間教育を推進するメンバーの、誓いの日となっていくのである。
 教育部夏季講習会で、伸一の青年への期待を痛感した青年教育者たちは、人間教育運動の先駆となって、若い力をいかんなく発揮していった。
 一九七六年(昭和五十一年)一月六日に行われた第十回教育部総会でも、青年教育者たちの活躍が目立った。
 教育部では、前年から、「人口急増地における児童の生活意識調査」を実施し、この総会で調査結果を発表した。その推進力となったのも、青年たちであった。
 当時、大都市周辺では、盛んに団地の造成が進み、著しい人口の急増を招いていた。
そうした地域での、児童の生活意識を調査し、教育の在り方を考えようとの趣旨のもとに、前年五月に、東京の多摩地域、愛知の春日井地域で調査を実施したのである。
 以来、教育部では、「中学生の行動問題に関する意識調査」や「中学三年生に見る戦争と平和の意識調査」なども、各地で実施していった。
 「認識しないで評価してはいけない」とは創価教育の父・牧口常三郎の教えである。子どもの意識を正しく認識し、新しき教育の道を開こうと、皆、懸命に奮闘したのである。