小説「新・人間革命」 人間教育48 4月12日

 一九七七年(昭和五十二年)二月六日、東京・信濃町創価学園生と懇談した山本伸一は、午後七時半、創価文化会館内の広宣会館で開催されている、東京教育部の第一回勤行集会に向かった。
 彼は、二十一世紀を「平和の世紀」「生命の世紀」「人間の世紀」としていくうえで、教育の担う役割の大きさを痛感していた。
 それだけに、話しておきたいことはたくさんあったが、今日は、根本の信心の在り方について、語ろうと思っていた。
 伸一が会場に到着した時には、予定されていた式次第は、ほぼ終わっていた。彼が姿を現すと、大きな拍手と歓声が起こった。
 「こんばんは! 寒いところ、ようこそ、おいでくださいました!」
 彼は、こう呼びかけ、皆と一緒に題目を三唱すると、用意されていたテーブルとイスを、もっと前へ移動するように言った。
 「皆さんのなかに入り、懇談的に話をしたいんです。皆さんも、前に来てください」
 皆が、伸一を取り囲むように座った。
 「二十世紀の大きな出来事の一つは、人類の宇宙飛行といえるでしょう。八年前(一九六九年)、アメリカのアポロ11号が月面着陸に成功し、人類史上、初めて月面に降り立った、
アームストロング船長の、『この一歩は一人の人間にとっては小さなものだが、人類にとっては偉大な躍進だ』との第一声を、皆さんも、よく覚えていると思います。
 次元は異なりますが、それは、私どもの日々の前進についても言えます。広宣流布のための一つ一つの勝利は、小さなことのように思えるが、人類の恒久平和と幸福を築く、前人未到の一歩一歩です。
そこから、人類史を画する新しい歴史が始まるからです。
 さて、このアポロ11号は、サターン5型ロケットの先端に取り付けて、打ち上げられています。
 そのロケット開発の指導にあたってきた立役者こそ、ロケットの父とも言われる、フォン・ブラウン博士でありました」