小説「新・人間革命」 灯台 4 4月23日

山本伸一は、聖教新聞の記者に語った。
 「日蓮大聖人は、何度も命を狙われ、流罪になっても、微動だにすることなく、『然どもいまだこりず候』(御書一〇五六ページ)と、一歩も引かれることはなかった。
その御言葉には、天をも焦がさんばかりの、燃え立つ執念の炎がある。それが、広宣流布の勝負を決する力なんだよ。
 執念とは、決して、あきらめることなく突き進む忍耐力であり、粘り強さだ。最後の最後まで、ますます闘魂を燃え上がらせて戦う敢闘精神だ。何ものも恐れぬ勇気だ。
 戦おうよ。ぼくと一緒に。そして、歴史を創ろうよ。
 時は、瞬く間に過ぎていってしまう。人生というのは、思いのほか、短いものだ。だから、今こそ、広宣流布の舞台に躍り出なければ、戦うべき時を逸してしまう。私は、いつも本気だよ。
 今生の最高の思い出となり、財産となるのは、自分の生命に刻んできた行動の歴史だ。青年ならば、壮大な広宣流布のロマンに生き抜いていくんだよ」
 記者たちは、伸一の言葉に、並々ならぬ決意を感じた。
 記者の一人が、尋ねた。
 「先生は、今、自ら先頭に立たれて大教学運動を展開してくださっています。これは、いよいよ仏法を、本格的に社会に開いていく時代が到来したということなんでしょうか」
 伸一は、言下に答えた。
 「そうです。つまり、仏法の人間主義という哲理を、一人ひとりが、あらゆる分野で体現し、実証していく時代に入ったということなんです。
その意味から、私は、社会本部のメンバーの育成に、全力を注ごうと思っています。全会員が、社会にあって、勝利の旗を掲げることが、立正安国になるんです。
 皆が勝利王となって、互いに、『よくやった!』『よく頑張った!』と、賞讃し合い、肩を叩き合う姿を、私は見たいんです」
 伸一の瞳には、闘魂が燃え輝いていた。