小説「新・人間革命」 灯台 9 4月29日

社会部の合同グループ指導会から一年五カ月後の、一九七七年(昭和五十二年)二月二日、創価文化会館内の広宣会館で開催された東京社会部の勤行集会に、会長の山本伸一が姿を現した。
予期せぬ会長の出席に、場内は大拍手と大歓声に包まれた。
 伸一は、この日、社会部のメンバーが、職場で勝ち抜いていくための要諦を、何点か、語っておこうと考えていた。
 「わざわざおいでいただき、まことにご苦労様でございます。また、大変にありがとうございます。心より感謝申し上げます」
 伸一は、深く頭を下げた。それが、彼の、ありのままの気持ちであったのだ。
 集ったメンバーは、皆、それぞれの職場にあって、要職を担っている。懸命に仕事を追い込んで、駆けつけて来ているに違いない。夕食を済ませていない人もいよう。
 もちろん、参加者の側には、遅刻などしないようにさまざまに工夫し、馳せ参じるという自覚が大事である。法のために、求道心を燃え上がらせ、参加することが信心であり、その戦いのなかに、仏道修行もあるからだ。
 しかし、会合を主催する側は、皆が万障繰り合わせて出席してくださることを、当然だなどと考えては絶対にならない。まず、その信心に敬意を表して、心から賞讃し、ねぎらいの言葉をかけることである。
 また、開催した側には、集ってくださった方々が、本当に来てよかった。心底、感動した”“生命が覚醒した思いがすると感じる、会合にしていく責任と義務がある。
 伸一は、以前、出版社に勤務する青年と懇談した折、人気の高い作家などの講演料が話題になった。五十万円ぐらいのことが多いと聞くと、伸一は言った。
 「それは、数百人分の残業代に相当する。学会の会合参加者には、残業の時間をやりくりして来られる方も多い。
それだけに、一流の文化人の講演以上にすばらしい、感動的な内容の会合にしなければ、申し訳ないことになる」