小説「新・人間革命」 灯台 11 5月2日

 社会部の勤行集会で、山本伸一は、広宣流布といっても、自分の足元を固めていくことが重要であると訴えた。
 「足元を固めるというのは、具体的に言えば、平凡なようですが、まず、健康であるということです。人間として、社会人として、最も大事なものは、自身の生命です。
したがって、どうか、お体を大切にしていただきたい。健康管理をし、事前に病を防ぐという姿にこそ、信心の智慧があるんです」
 健康の維持は、社会で勝利するための、大事な要件である。いつも、生命力にあふれ、はつらつとしていてこそ、力の限り、働くこともできるし、職場を守り支えていくこともできるからだ。
 仏法は道理である。暴飲暴食、睡眠不足、過労などが続けば、どこかに支障をきたし、病にかかったり、事故を起こしたりしかねない。
そうならないために、さまざまに工夫し、価値的な生き方をしていくことが、仏法者の姿といってよい。
 規則正しい生活をし、さわやかで張りのある勤行をし、生命力を満々とたたえて、職場、地域で活躍していくのだ。
 次に彼は、家庭の大切さに言及した。家庭が盤石であってこそ、職場でも、安心して力を発揮していくことができるからだ。
 また、人間の幸せといっても、家庭など、身近なところにある。さらに、後継者を育て上げていくうえでも、最も重要なのは家庭教育である。
立派な、模範の家庭を築いていくことは、地域広布の灯台をつくることにもなる。
 ここで伸一は、職場の勝利者をめざすうえでの、仏法者の姿勢について語った。
 「職場にあって、第一人者になるためには、まず、信心をしているからなんとかなるだろうという考えを、徹底して排していくことです。
そうした考えは、『仕事を信心ととらえて頑張りなさい』という大聖人の御指導に反する我見であり、慢心の表れです。
 正しい信心とは、最高の良識であることを銘記していただきたい」