小説「新・人間革命」 灯台 22 5月16日

波留徳一は、学会の先輩の激励に、〝よし、もう一度、本気になって信心してみよう〟と思った。
 時間をこじ開けるようにして唱題に励み、学会活動に飛び出した。広宣流布の使命に目覚めると、歓喜があふれ、仕事への挑戦の意欲がみなぎった。自信も取り戻した。
 彼は、一九六七年(昭和四十二年)には、男子部の地区の責任者である隊長となった。
 仕事は、残業に次ぐ残業の連続である。学会の組織での責任もある。しかし、そのなかで、波留は固く決意する。
 〝信心は、一歩たりとも引くものか!〟
 大切なのは、一念である。心を定めることである。決意が固まらなければ、戦わずして敗れることになる。
 彼は、活動に参加できず、悩みを抱えて悶々としている青年たちを、一人、また一人と立ち上がらせていった。弘教も次々と実らせた。
 仕事は、ますます増えていったが、学会活動を優先させた。〝信心していれば、仕事の面でも守られる!〟という確信があったからだ。だが、それが、いつの間にか、甘え、油断となり、仕事が疎かになっていった。
 遂に、ある時、上司から、「仕事と信心と、どっちが大事なんだ!」と叱責された。 〝これでは、いけない! 周囲の人たちは自分の姿を通し、創価学会を見ているんだ〟
 「信心第一、仕事も第一」と決めた。両立への本格的な挑戦が始まった。
 店舗の改装工事は、スーパーの定休日に行う。皆が休んでいる時も、波留は改装の現場に出かけ、業者と意見交換し、一緒に作業に汗を流した。
改装資材のベニヤ板の上で仮眠を取って、泊まり込みで仕事を続けたこともあった。
 学会活動に参加しても、深夜には、仕事に戻った。また、夜更けて、連絡事項や激励の言葉を書いた手紙を、メンバーの家のポストに入れてくることもあった。
 〝無理だ!〟と思えても、やり切ろうという執念を燃やす時、新たな工夫が生まれる。