小説「新・人間革命」 灯台32  5月27日

一九七五年(昭和五十年)九月、初の試みとして、山形県の「農村青年主張大会」が上山市民会館で開催された。
 後継者不足、不安定な収支、離農など、深刻な問題が山積しているなかで、信心を根本に、農業に青春をかける青年たちが、郷土愛や土に生きる誇りを、力強く訴えた。
 青年の信念の主張や心意気を、参加した地元の識者たちは高く評価し、今後の活躍に大きな期待を込めて拍手を送った。
 この「農村青年主張大会」は、やがて全国に広がっていった。
 さらに、各部の代表が登壇しての〝体験主張大会〟、そして、衛星中継による「農漁村ルネサンス体験主張大会」も、開催されていくことになる。
 まずは、わが地域に、希望の火を燃え上がらせるのだ。その火は、やがて、全国、全世界に広がっていくからだ。
 「改革とは本来足もとから始めるべきものです」(注)とは、イギリスのロマン派の詩人シェリーの至言である。
 翌七六年(同五十一年)一月には、男子部に「農村青年委員会」が発足する。農村部と連携を密にしながら、農村青年の活動を定着化させ、より一層、地域貢献の運動を推進していくことを目的に設けられたのである。
 また、この年の三月には、全国から農村青年の代表が集い、初の「農村部大会」が静岡県で開催されている。
 山本伸一は、歴史的な第一回大会を祝福し、メッセージを贈った。
 「いつの場合でも、新しい道をつけるためには、誰かが泥まみれになって死闘しなければならないのが、歴史の宿命であります。
 いかなる苦しみのなかでも、前進を止めてはなりません。ひとたびは後退を余儀なくされることがあっても、必ず、次はさらに進むのだという執念を失ってはなりません」
 農業の現実は、依然として厳しかった。
 しかし、参加者は、伸一の呼びかけに応え、〝だからこそ、仏法という価値創造の大法を持った私たちが活路を開こう!〟と、赤々と闘志を燃え上がらせるのであった。