小説「新・人間革命」 灯台 33 5月28日

「農村部大会」への山本伸一のメッセージは、農村再建の使命を強く促すものとなった。
 農村部では、一九七六年(昭和五十一年)にも、北海道などで、活発に「農業講座」を開催していった。
 講座では、地元の農村部メンバーの体験発表や、農業に関する学術研究者の講演などが行われた。
 農村部員は、現代農業が直面する諸問題に、なんらかの解決の道筋を示し、農村社会に希望の灯をともそうと、真剣な取り組みを重ねていった。
 七七年(同五十二年)一月には、社会の大黒柱である壮年に焦点を当てた「農村壮年講座」が、各地の研修所などで開催された。
 この催しでは、山本伸一の「諸法実相抄」講義を学び、仏法哲理の研鑽に力を注いだ。
 一人ひとりが、仏法者としての使命を自覚していくことこそ、農業再生の力となるからだ。
 壮年の意気は軒昂であった。壮年が立ち上がってこそ、物事の本格的な成就がある。
 壮年の「壮」とは、若々しく、元気盛んで、強く、大きく、勇ましいことをいう。
 ゆえに、意気盛んな男性を「壮士」と呼び、働き盛りの年代を「壮歳」といい、勇気のいる大がかりな仕事を「壮挙」というのだ。
 また、英国の女性作家シャーロット・ブロンテは、「壮年には叡智があります」(注)と綴っている。
 本来、青年をしのぐ、勢い、勇気、強さ、実力、叡智をもっているのが壮年なのである。
 まさに、壮年の力、叡智が発揮され、本格的な地域社会の建設に向け、農村部の活動が、いよいよ軌道に乗り始めた時に、第一回「農村・団地部勤行集会」を迎えたのである。
 農村部の抱える大きなテーマが、人口の過疎化のなかで、どうやって農業を再生させるかであるのに対して、一方の団地部は、人口の過密化した団地という居住環境のなかで、潤いのある人間共同体をいかにしてつくり上げていくかが、大きなテーマであった。
 農村の過疎、都会の過密――現代社会の抱える大テーマに、創価学会は、真っ向から取り組んでいったのである。