小説「新・人間革命」 灯台 45 6月11日
全国から駆けつけた参加者は、伸一の指導を一言も聞き漏らすまいと、耳を澄ませ、瞳を輝かせ、一心に彼を見つめていた。
伸一は、参加者の日々の活動に対して、ねぎらいと感謝を述べたあと、一人ひとりに語りかけるように、懇談的に話を進めた。
「私が、会長に就任したその年の七月、千葉県の銚子で、青年部の人材育成機関の一つであった『水滸会』の、野外研修を開催いたしました。
その時、地元の千葉からも、隣県の茨城からも、多くの同志が来られており、私は、しばし、懇談させていただいた。
語らいのなかで、一人の方が、漁獲量が減少して困っていると言われた。
私は、『皆さんの一念で、国土世間も変えていくことができると教えているのが仏法です。根本はお題目です』と申し上げました。
大聖人は、『心の一法より国土世間も出来する事なり』(御書五六三㌻)と仰せだからです。
国土の違いも、わが一念から起こり、わが一念に国土も収まります。
心の力は偉大です。何があっても負けない、強い、強い信心の一念があれば、一切の環境を変えていくことができる。それが『三変土田』の法理です」
「三変」とは、三度にわたって変えたことであり、「土田」とは、土地、場所を意味している。
見宝塔品では、七宝に飾られた巨大な宝塔が涌現する。
しかし、宝塔の扉は固く閉ざされ、多宝如来は現れない。