小説「新・人間革命」 灯台 49 6月17日

山本伸一は、次いで、地域にあって、広宣流布を推進していくうえでの、基本姿勢について語った。
日蓮大聖人の仏法は、下種仏法であります。
いまだ仏法の真実の教えを聞いたことがない末法衆生に、南無妙法蓮華経という成仏得道の種子を下ろし、一生成仏せしめ、人びとを救済していくことができる大法です。
したがって、その仏法を持ち、広宣流布の使命に生きる私どもの振る舞いは、一切が下種へとつながっていかねばならない。
つまり、日々の学会活動はもとより、毎日、毎日の生活の姿や行動が、すべて妙法の種子を植えていく大切な作業であるということを、自覚していただきたい。
ゆえに、信心していない人に対しても、また現在は、信心に反対であるという人に対しても、幸せを願い、大きな、広い心で、笑顔で包み込むように接して、友好に努めていくことが大事です。
それが、仏縁を結び、広げていくことになるからです」
ここで伸一は、農村部の使命に言及していった。
「都会生活は、いいように思えても、美しい木々の緑も、すがすがしい空気も失われつつあり、〝人間不在〟の状況をつくりだしています。
農村には、さまざまなご苦労もおありかと思いますが、都会の喧騒から離れ、静かで豊かな自然に恵まれた農村生活を、私は羨ましく思っている一人であります。
つまり、皆さんは、実は、現代の人びとが憧れる、ある意味で極めて恵まれた環境で生活し、その愛する郷土で、妙法を宣揚する活動ができるんです。
そのこと自体に、最大の誇りをもち、確たる信念の人生を歩んでいっていただきたい」
農業に従事する人のなかには、農業を辞めて、都会に出ようかと悩み考えている人も少なくなかった。
しかし、考え方、ものの見方を変えれば、全く別の世界が開かれる。伸一は、農村部のメンバーに、その眼を開き、晴れ晴れとした心をもってほしかったのである。