小説「新・人間革命」 灯台 51 6月20日

「次に団地部について、お話ししたいと思います」
山本伸一が、こう言うと、今度は、団地部のメンバーから、大きな拍手が起こった。
「実は、結婚してからしばらくの間、私は、よく妻と、こんな話をしました。
『団地に住みたいな。コンパクトで便利じゃないか』
『すべて、機能的につくられていますね』
『少し狭いかもしれないが、部屋の数は、そんなになくても、御本尊様さえ、きちんと御安置して、荘厳できればいいんだから』
『そうですね。御本尊様には一切が含まれていますからね』
――私も、妻も、団地がいいと思っていましたが、子どもが三人でき、また、会長にもなり、結局、団地で暮らす夢は、あきらめざるを得ませんでした。皆さんが羨ましい」
再び、団地部のメンバーから、喜びの拍手が高鳴った。伸一は、話を続けた。
「都市化が進んでいる現代社会にあっては、団地という住宅様式は、都市学的にも、社会学的見地から考えても、時代を先取りした一つの結晶と見ることができます。それは、世界的な流れであるといっても、過言ではありません。
また、近年、大規模な団地は、一つの都市としての機能をもつに至っているといえます。
この団地を船舶に譬えるならば、皆さん方は、地域の繁栄を担い、人びとを幸福という人生の目的地へと運ぶ、船長、機関長という重要な使命をもった方々であります。
そのために、地域の方々と協調し、信頼を通わせつつリードし、人間のスクラムを広げながら、愉快に、朗らかに、前進していっていただきたい」
世間を離れて仏法はない。日蓮大聖人は、「まことの・みち(道)は世間の事法にて候」(御書一五九七㌻)と仰せである。仏法は、地域、社会での、自身の振る舞いのなかにある。自分が今いる、その場所こそが、仏道修行の場であり、広宣流布の場所なのだ。