小説「新・人間革命」 灯台 55 6月24日

〝異なった生活を営む多様な人びとが、一つの団地という世界で、共に生きる。まさに団地は、「小さな合衆国」といえる。
その団地の人びとを、友情と信頼の固い絆で結び、人間共和の礎をつくらねばならない〟――それが、山本伸一の団地部への期待であった。
彼は、一九九五年(平成七年)十一月、団地を、心と心が通い合う、理想の人間共同体とするための具体的な実践を、十項目の指針にまとめ、団地部のメンバーに贈った。
 
 一、「小さな合衆国(団地)」の無事・安穏を日々ご祈念。
 二、笑顔のあいさつで明るい団地。
 三、良き住民として、常識豊かに模範の生活。
 四、近隣を大切に、広く、大きな心で、皆と仲良く。
 五、友情の花を咲かせて、心豊かな人生。
 六、地域貢献活動には、率先垂範で積極的に取り組む。
 七、自然保護で緑あふれる希望の団地。
 八、お年寄りを大切に、励ましの一声かけて今日も安心。
 九、青少年の健全な育成に協力。
 十、冠婚葬祭は、思想・信条を超えて相互扶助。
 
この指針は、地域の繁栄と幸福をめざす団地部の友の、大切な規範となっていった。
今や人間関係の断絶は、団地に限らず、社会全体に蔓延し、「無縁社会」などと評される事態に至っている。
そのなかにあって、団地部の友をはじめ、わが同志は、それぞれの地域で、友情の連帯を築こうと、対話の花園を広げている。
この善のスクラムは、希望を育む精神のセーフティーネット(安全網)となって輝きを放っている。
日蓮大聖人は「一切衆生の異の苦を受くるは悉く是れ日蓮一人の苦なるべし」(御書七五八㌻)と言われ、あらゆる人びとのすべての苦しみを、わが苦とされた。われらは、この大慈大悲の御精神を受け継ぎ、わが地域に、人間讃歌の時代を創造するのだ。