小説「新・人間革命」 福光2  2011年 9月3日

山本伸一が福島文化会館に到着したのは、午後四時半過ぎであった。
文化会館は、郡山駅の西に位置し、北には安達太良山が、東には阿武隈高地が遠望できた。
敷地は広々としており、建物は、茶色いタイル壁で覆われた、鉄筋コンクリート造り三階建てであった。
一階には事務室や編集室、会議室が、二階には二百八畳の大広間や和室がある。また、三階は記念室などとなっていた。
伸一が玄関の前で車を降りると、数人の幹部が出迎えてくれた。
彼は、福島県長の榛葉則男と東北長の利根角治に視線を注ぎながら、気迫のこもった声で語りかけた。
「来ましたよ! 新しい福島を、東北を創ろう! 今日からは、新章節への出発だよ」 「はい!」
二人が、声をそろえて答えた。
伸一は、文化会館の庭を歩き始めた。
「立派な会館ができたね。みんな、喜んでいるだろうね。この会館で信心を充電し、大確信と大情熱をもって飛び出し、広宣流布の大旋風を起こしていくんだよ」
榛葉は、宮城県出身で、全国の副青年部長等を務め、前年十二月に福島県長に就任した、進取の気風と企画力に富む三十五歳の青年であった。
伸一は、その彼に、広宣流布建設の本当の力とは何かを、語っておこうと思った。
「榛葉君。新しい福島をつくるためには、目先の変わったプランや、新しい運動方針を打ち出せばいいというものではない。
根本は全同志の一念の転換であり、生命の革新だ。
わが郷土を愛し、広宣流布に生き抜こうという、本物の闘士をつくっていくことだよ。
福島創価学会が、ここまで発展してきたのは、草創の同志たちの、真剣勝負の戦いがあったからだ。
周囲から罵られ、迫害され、どんな仕打ちを受けても、一歩も引かずに、ひたすら広宣流布のために、一身をなげうってくださったことを絶対に忘れてはならない」