小説「新・人間革命」 福光 10 2011年 9月13日

到着早々、福島県長や東北長らに全力で指導する山本伸一の勢いに、同行の幹部たちは圧倒された。
それを見抜いたように、伸一は言った。
「私は、福島、そして東北の同志が、どんな困難もはねのけて、大発展していく力をつけてもらいたいんだ。
東北は、冷害などの自然災害に、何度となく苦しんできた。
都からも遠く、中央政府の恩恵にも、あまり浴することがなかった。その東北の人びとに、本当に幸せになってほしいんだよ。
それには、強盛な、何があっても決して壊れることのない、金剛不壊の信心を確立するしかない。一人ひとりが師子になるんだ。
そのために私は、ここに魂魄をとどめる思いで、この三日間、みんなの生命を覚醒したいと決意しているんです」
福島、東北を思う伸一の心を知り、幹部たちは、目頭を熱くするのであった。
十一日午後六時過ぎ、伸一は、福島文化会館の開館記念勤行会に出席した。
彼の福島県訪問は、一九六九年(昭和四十四年)以来、八年ぶりである。
「こんばんは! 皆さんにお会いしに来ましたよ。福島文化会館の完成、おめでとう」
伸一が会館の大広間に姿を現すと、歓喜の大拍手が轟音のように響いた。
記念勤行会では、勤行に続いて、県長や副会長があいさつし、伸一の指導となった。
彼は、満面に笑みをたたえ、皆を包み込むように話し始めた。
「この福島文化会館は、わが創価学会会津磐梯号ともいうべき不沈艦であり、今日は、その船出ともいえましょう。
新しい発展のためには、その活動の中心となる拠点が必要です。
この福島文化会館を、福島創価学会全体の中心拠点として、新しい心、新しい決意で仏道修行に励み、幸せの大前進をお願いしたいのであります」
そして彼は、福島県下の各会館も、さらに整備し、充実させていくことを発表した。