小説「新・人間革命」 福光 12 2011年 9月15日

山本伸一は、第三の「生命力豊かな信仰の福島」について語っていった。
「人生を勝利するための勇気も、智慧も、忍耐も、強さも、その原動力は生命力です。
生命力が弱ければ、心は、悲哀や感傷、絶望、あきらめに覆われ、愚痴も多くなり、表情も、声も、暗くなる。
そうなると、人もついてはきません。元気のある、明るい人を、みんなは求めているんです。
生命力を満々とたたえ、自らが燃えていてこそ、人びとに希望の光を送る太陽の存在になれる。
また、生命力にあふれていれば、すべてを前向きにとらえ、困難が大きければ大きいほど、闘志が燃え上がります。
本来、私たちには、仏の大生命が、地涌の菩薩の大生命が具わっている。
日蓮大聖人が『法華の題目は獅子の吼ゆるが如く』(御書七六四ページ)と仰せのように、師子王の大生命力を涌現していく力が題目なんです。
唱題によって、大生命力が、わが身に満ちあふれるならば、何があっても負けずに、どんな事態をも、悠々と乗り越えていくことができる。
したがって、われら創価の同志には、克服できない苦境など絶対にないと、私は、断言しておきたいんです」
最後に伸一は、福島文化会館の三階に、恩師記念会館を設け、先師である牧口常三郎初代会長、恩師・戸田城聖第二代会長の魂を継承していく誓いの場としたいことを述べ、話を結んだ。
指導を終えた伸一は、大広間に置かれたピアノに向かった。
「今日は、福島の皆さんの新出発をお祝いし、拙くて申し訳ありませんが、ピアノ演奏をお贈りします」
歓びのどよめきと、拍手が広がった。
最初に流れたのは、「厚田村」の調べであった。そして、「さくら」の曲が響いた。
福島に、東北に、幸せの春よ来い!との祈りを託しての、真心の演奏であった。
調べに合わせて、小さく首を振る参加者の顔には、笑みの花が満開であった。