小説「新・人間革命」 福光 13 2011年 9月16日

午後八時から、山本伸一は、福島文化会館の二階和室で、県・圏の代表ら二十人ほどと、懇談会をもった。福島県を担うリーダーたちを、よく知っておきたかったのである。
福島県は、都道府県のうち、北海道、岩手県に次ぐ広大な面積を有している。
阿武隈高地奥羽山脈という二つの山系が南北に走り、気候も異なる三つの地域から成っている。
太平洋沿いから阿武隈高地にかけての、いわき市を中心とする「浜通り」は、比較的温暖な地域で、漁業が盛んである。
阿武隈高地奥羽山脈の間に位置する「中通り」は、内陸性気候である。県庁所在地の福島市や、郡山市もあり、政治、経済の中心となっている。
奥羽山脈西側の「会津」は、雪も多く、日本海側気候に近い。この地域の中心となる会津若松市には、歴史と文化の薫りが漂う。
伸一は、参加者一人ひとりの名前などを聞きながら、懇談的に話を進めた。
「どうか、榛葉県長と一本松県婦人部長を支え、応援し、しっかり団結して、仲良く前進していってください」
それから、榛葉に向かって、厳しい口調で言った。
「榛葉君は、県長になったからといって、自分に力があるなどと思ったり、偉くなったような気になってはいけないよ。
少しでも、そういう思いがあったとしたならば、それは、役職に幻惑された姿であり、傲慢であるということです。
若くして中心者になったということは、未来を期待されてのことであり、必ずしも、力や実績が評価されたからではありません。
年配の同志のなかには、折伏の数にしても、個人指導して立ち上がらせた人の数にしても、君よりも圧倒的に多い方がたくさんいます。
君の何倍も、苦労して、苦労して、苦労し抜いて、今日の創価学会を築いてくださった方は数知れません。
そうした方々を守り、また、仕え、尽くしていくのが幹部なんです」