小説「新・人間革命」 福光 15 2011年 9月19日

福島県の代表たちは、緊張した顔で山本伸一の次の言葉を待った。
「リーダーは、自分が一人立つことは当然ですが、組織の全同志が、自分と同じ決意に立って、喜び勇んで、戦えるようにしなくてはならない。
よく、こういう組織があります。
──県長をはじめ、総ブロック長も、大ブロック長も、必死になって頑張っている。しかし、結果的に、はかばかしい前進がない。
それは、本当に張り切って、駆け回っているのは、ライン幹部だけで、必勝の息吹が、組織全体に波及していないからなんです。
この状況を打開するには、全幹部が結束していくことです。特に、すべての副役職者が、いかんなく力を発揮していくことがポイントです。
そうなった時に、組織全体が回転していくんです。
学会の組織は、次第に重層的になってきているので、副役職の人は、これからますます増えていきます。
世代交代のための人事もあるので、副役職者の方が、正役職者より活動経験も豊富で、力もあり、年齢も上というケースも多くなっていくでしょう。
それだけに、正役職者は、俺が中心だなどという顔をするのではなく、副役職の方々の力をお借りするのだという姿勢で接し、尊敬していくことが大事です。
連絡なども、むしろ、正役職者の方から積極的に取って、意見や応援を求めていくんです。
人間は、自分は期待もされていないし、軽んじられていると思えば、力を出そうとはしません。
また、副役職者の役割分担や責任を明確にしていくことも必要でしょう。
ともあれ、副役職者が、中心者と呼吸を合わせ、はつらつと活躍している組織は、大きな力を発揮しています」
荒野に一本の木が立っているだけでは、風は防げない。多くの木々が茂り、森をつくってこそ、風も防ぐことができるし、さまざまな森の恵みも、もたらすのである。