小説「新・人間革命」 福光 24 2011年 9月29日

鯉の放流式に引き続いて、福島文化会館の開館を記念して、各部の木などの植樹が行われた。
山本伸一は、ケヤキの木を植樹した。ケヤキは、福島県の県木である。
彼は、県長らから請われ、この木を「広布ケヤキ」と命名した。
その間にも、男子部の代表などと、次々に記念のカメラに納まった。
このあと、郡山市内を視察した。彼方には、白雪を頂いた安達太良山が腕を広げるようにそびえていた。
車中、彼は、東北総合長で副会長の青田進に尋ねた。
「福島文化会館まで、車を持っていない人たちは、どういう方法で来るのか」「文化会館の駐車場には、車は何台入るのか」「近隣には、誰が、いつ、あいさつに行ったのか」
等々、質問は、矢継ぎ早に発せられた。
伸一は、会員を守り、近隣の理解を得ながら、無事故で円滑な会館運営をしていくために、どうしても、さまざまな観点から、確認をしておかずにはいられなかったのである。
「想定されるあらゆる事態に備えて、的確な対策を立てよ」とは、第二代会長・戸田城聖の指導である。
伸一は、福島文化会館ができるまで、福島の中心会場となってきた、郡山会館の前も通ってもらった。
そして、同行の幹部に、この会館に着任する牙城会などの役員に対して、伝言と激励の品を託した。
皆の目は、新たに完成した福島文化会館に向けられている。しかし、記念行事の準備などは、この会館を使って行われてきたにちがいない。
いわば、陰の力の拠点となっている会館である。伸一は、?その会館を黙々と守っている方々を大切にし、少しでも励ましの手を差し伸べたい?と思ったのである。
リーダーが、光の当たるところしか見ず、陰の人にスポットライトを当てようとしなければ、要領主義がまかり通るようになってしまう。
人材を見つけだすには、表面より側面や裏面を、水面よりも水底を凝視する眼を開かねばならない。