小説「新・人間革命」 福光 25 2011年 9月30日

午後四時過ぎ、山本伸一は、県・圏幹部ら八十人ほどとの懇談会に出席した。
この集いは、組織の中核として活躍するメンバーや、草創期からの功労者をねぎらい、励ますために、福島文化会館近くのレストランで、食事をしながら行うことにしたのである。
伸一は、会場に到着すると、各テーブルを回って、一人ひとりにあいさつした。
婦人たちがいる円形テーブルに行くと、並んで座っていた県指導長の鈴村アイと常磐圏の指導長の菅田歌枝に声をかけた。
「福島の二人のお母さんが健在なんで、嬉しい。草創の功労者が元気で、いつまでも活躍されている組織は、必ず発展しています」
鈴村は、メガネをかけた明朗闊達な感じの婦人で、二年前まで、県の婦人部長をしていた。また、菅田は、控え目ななかに、信心の筋金が通った婦人である。
菅田が、ほほを紅潮させて言った。
「ありがとうございます。私も五十四歳になりました」
伸一は、笑みを浮かべた。
「レディーは、年齢を言ったりしてはいけませんよ。まだまだお若い。牧口先生は、その年では、まだ入信さえしていません。
人生で大事なのは、ラインの中心者を退いたあとなんです。
その時に、「自分の使命は終わったんだから、のんびりしよう」などと考えてはいけません。そこから、信心が破られてしまう。戦いは、これからですよ。
先日、ある県の指導長に、『この七年間で何人の人に仏法を教えましたか』と尋ねました。
これまでに、百人、二百人と折伏してきた方です。ところが、『この七年は、折伏は実っておりません』と言うんです。
私は、『もう一度、草創期の思いで、戦いを起こしましょう』と申し上げました。
大事なのは過去の功績ではない。『今、どうしているのか』『これから何をするか』なんです。
八十歳になろうが、九十歳になろうが、命ある限り戦い、人びとを励まし続けるんです。『生涯青春』でいくんですよ」