小説「新・人間革命」 共戦 42 2012年1月4日

山本伸一たちが、山口文化会館に戻ったのは、午後八時過ぎであった。 
会館に入ると、中国各県の青年職員らが、荷物整理などの作業にあたっていた。伸一は、中国女子部長の本間三津代に尋ねた。
山口県以外の人たちが大勢来ているが、どうしてなんだい」
「役員として応援に来てもらっています。女性が十二人、男性は二十五人です」
それを聞くと、伸一は、中国方面の責任者である副会長に言った。
「役員の人数が多すぎるね。ここは、いわば、山口創価学会の本陣だ。本陣というのは、ざわざわしていてはならない。
少数精鋭で、てきぱきと仕事を片付けていくことが大事なんだよ。明日から役員は、今日の十分の一でいい。一人が十倍の力を出せばいいんだから。
それが人材革命だよ。
みんな地元に帰って、同志の激励、指導に回るんだ。その方が価値的じゃないか。
私は、せっかく山口に来たんだから、山口の青年たちを、直接、訓練したいんだよ。
それなのに、ほかの地域から何十人もの人が来て、動き回っていたのでは、山口の人の顔が見えなくなってしまう。
数少ない山口の職員や青年が、一切の責任をもって運営にあたるのは大変にちがいない。
緊張もするだろうし、失敗もあるかもしれない。でも、失敗してもいいんだ。それが学習になり、教育になる。何かあったら、私が守ります」
伸一は、一人ひとりの青年たちが、いとおしくて仕方なかった。共に行動し、語り合い、励まし、自分の知っていることは、すべて教えておきたかった。
しかし、普段は、その機会はない。だからこそ、その地の青年たちとの出会いを、何よりも大切にしたかった。
彼は上着を脱ぎ、青年たちに呼びかけた。
「さあ、一緒に荷物の山を片付けよう。二十分で終わらせよう。私が陣頭指揮を執るよ。みんなには休んでもらい、青年が黙々と働くんだ。
青年の時代だよ。戦闘開始だ!」