小説「新・人間革命」 共戦 41 2012年1月1日

 初日の出   己が心も  初日の出  
 
一九五三年(昭和二十八年)の元朝山本伸一が詠んだ句である。彼は、燃えていた。
さあ、戦い抜くぞ! いよいよ広布後継の大闘争の時代を迎えた。
戸田先生のお心を体して、慈折広宣流布大願成就への大きな流れを開き、先生にご安心していただくのだ
翌一月二日、彼は、二十五歳の誕生日を迎える。そして、この日、男子部の第一部隊長の任命を受けたのである。
さらに、四月には、文京支部長代理に就任している。
伸一は、前年、蒲田支部幹事として二月闘争の指揮を執り、学会創立以来、一支部としては未聞の弘教を成し遂げ、戸田が掲げた会員七十五万世帯達成の突破口を開いた。
その彼が、さらに重責を担い、広宣流布の最前線に躍り出たのが、この五三年であった。
伸一は今、山口文化会館に戻る車中にあって、二十四年前に詠んだ句を、頭のなかで反復しながら、思いをめぐらしていた。
私は、日々、「初日の出」とともにあろうと、深く心に誓ってきた。
初日の出──それは、波浪猛る大海原に勇んで飛び出し、暗黒を一変させる、新しき挑戦の情熱である。勇気と歓喜の炎である。
その光が、自他共の苦悩の闇を破り、人生を黄金の希望に染めゆくのだ。青年とは、常に、心に太陽をいだいている人だ
彼は、車に同乗していた山口県長の梅岡芳実に語った。
「『初日の出』を迎えた思いで、広宣流布の新しい歴史を創っていこう! みんなが、勇んで戦いを起こし、一日一日、誇らかな『自分物語』を、心に綴っていくんだ。
大ドラマには、苦闘と涙がある。でも、ヒーロー、ヒロインは負けない。悲しみや苦しみが深ければ深いほど、勝利の感動は大きい。
一人ひとりが主人公であり、偉大な使命の勇者だ。みんなが綴る物語が楽しみだな」