小説「新・人間革命」 共戦 59 2012年 1月24日

山本伸一は、集った人たちに、視線を巡らしながら語った。
「このたび、山口市徳山市に文化会館ができましたが、防府は、あくまでも山口創価学会の原点の地です。山口広布の原動力となる地であります」
伸一が第三代会長に就任した一九六〇年(昭和三十五年)五月三日、山口支部が結成され、その支部事務所が置かれたのは防府であった。
さらに、六五年(同四十年)、防府会館が誕生すると、同会館は、県の事務機能の中心となってきたのである。
また、歴史的にも防府は、山口県南部、東部を占める周防国国府として栄えてきた。
伸一は、言葉をついだ。
「どうか防府の皆さんは、?自分たちこそ、山口創価学会の中心である??ここは山口の人びとを幸福にしていく原点の場所である?との誇りをもって進んでください」
アルメニアの詩人イサアキャンは、「何があろうとも、人間よ、誇り高くあれ」と詠っている。
誇りは、人間の魂を貫く背骨である。誇りある人は強い。誇りある限り、いかなる困難にも、挫けることはない。
伸一は、ひときわ、力強い声で言った。
「本日は、万感の思いを込めて、防府の皆さんに、句をお贈りしたいと思います。
  
  広宣の   原点ここなり  防府
  
皆さんは、その意義深き防府に出現した、如来の使いです。地涌の菩薩です。
そして、信頼する不二の師弟です。その誇りを胸に、勇んで広布の道を走り抜いてください。
では、また、お会いしましょう!」
短時間であったが、防府の友にとっては、忘れ得ぬ、ひと時となった。
伸一が山口文化会館に着いたのは、午後十時近かった。