小説「新・人間革命」 薫風 4 2012年 2月1日
法論には、日蓮宗側と学会側が、それぞれ司会を立てることになった。
その司会は、自分たちの主張のうえに立って、取り決めにしたがい、問答を進行する役割を担っていた。
「司会者は伸一以外に考えられない!」
そして、日蓮宗と正邪を決する、歴史的な大法論の司会者が、二十七歳の伸一に決定したのである。
この戸田の期待に、彼は、見事に応えた。「まことの時」に、師の期待に応えてこそ、真の弟子である。
伸一は、法論冒頭の司会者あいさつで、全国各地にあって、身延の日蓮宗から、何千、何万の人が学会員となっている事実をあげ、それが、どちらが正しいかを厳然と証明していると、断言したのだ。
開口一番、学会の主張を要約し、大確信をもってぶつけたのだ。
その烈々たる師子吼のごとき気迫に押され、身延側は静まり返った。まさに、「師子の声には一切の獣・声を失ふ」(御書一三九三p)との事態が現出したのである。
一方、学会側の聴衆からは、万雷の拍手が湧き起こった。登壇者も元気づき、その表情には、闘魂と活気が満ちあふれた。この時、勝利への突破口が開かれたのである。
身延側は、法論で、しどろもどろになり、最後は、時間がきたことを理由に、法論を切り上げ、早々に退去しようとした。創価学会の大勝利は、誰の目にも明らかであった。
司会の伸一によって、閉会が告げられた。それは、おのずから勝利宣言となった。