小説「新・人間革命」 薫風 9 2012年 2月7日

九州の幹部が、山本伸一に言った。
「北九州には、福富さんのほかに、あと二人、男子部の幹部として活躍している歯科医師がおります」
「みんな、よく知っています。四年前、北九州で行われた九州青年部総会のあとに、お会いしました。ほかの二人は元気かな」
福富淳之介が答えた。
「二人とも、今日は役員として、この会館に来ております」
「それなら、すぐにお呼びして!」
ほどなく三人の青年歯科医がそろった。福富と、大内堀義人、三賀正夫であった。
「懐かしいな。みんな、歯医者さんらしくなったね。
歯科医師が男子部の幹部となり、役員として、陰の力に徹し、黙々と頑張っている。その姿が尊いし、私は嬉しい。それが、創価学会の本当の姿です。
社会的に、それなりの地位や立場を得ると、自分が特別に偉いかのように思い、学会員を見下したり、学会活動を軽んじるようになってしまう人もいます。
しかし、医師だから、弁護士だからといって、特別に偉いわけではない。どの職業も、社会に必要なんです。
優秀な医師でも、おいしいお米を作ることはできないし、有能な弁護士だからといって、家を建てることはできない。職業に貴賤なしです。
ところが、自分がいちばん偉いのだと勘違いしてしまい、地道な仏道修行を怠り、信心という一生成仏への直道を、踏み外してしまう。
これほど、愚かなことはありません。
自他共の、生涯にわたる絶対的幸福を築くだけでなく、未来永劫の幸福の道を教えているのが仏法です。
永遠の平和と人類繁栄の哲理を説いているのが仏法です。
ゆえに、その仏法を実践し、伝え抜いていった人こそ、いちばん尊貴で偉いんです。
どうか、皆さんは、社会的な地位や立場に幻惑されるのではなく、どこまでも一途に、真の仏法者として、創価の大道を歩み抜いてください」