小説「新・人間革命」 薫風 41 2012年 3月16日

寺津克彦は、創価大学卒業後は、故郷の佐賀県に帰って、地域の繁栄のために生きたいと決意し、市役所の採用試験を受け、合格を勝ち取った。
一方、杉瀬茂は、東京の企業への就職が内定した。
しかし、寺津と話すなかで、自分も郷里の佐賀県のために力になりたいとの思いが、日ごとに強くなっていった。
『ぼくも佐賀県で仕事を探そう。自分を育ててくれた人たちに恩返しをしたい』
結局、杉瀬も、卒業後、郷里に戻り、小学校の事務職員となったのである。
──「偉大なる心は常に感恩の情に満つ」(注=2面)とは、教育者で農政学者の新渡戸稲造の言葉である。
山本伸一は、懇談会の席で、創価大学の卒業生と現役創大生のメンバーに語った。
「私は、創立者として、父の思いで、諸君の未来を、じっと見守っていきます。
創価大学は、誕生して間もない、新しい大学です。卒業生も、ようやく三期生まで送り出したにすぎない。
大学の社会的な評価も、まだ、定まっていません。大学の存在さえ知らない人も、たくさんいます。
だからこそ諸君が、創立者の自覚で、パイオニアとなって、道を開いてほしいんです。
それには、一人ひとりが、創大生というのは、これほど力があるのか! これほど勉強しているのか! これほど崇高な志をもっているのか! ここまで誠実で、真剣なのか! 
ここまで、地域、国家、人類のことを考えているのか!と、人びとから、賞讃、尊敬されるようになっていくことです。
諸君が輝くことによって、大学の名も輝いていきます。
三十年後、五十年後をめざして、私と一緒に、わが創大の、勝利と栄光の歴史を創っていこうよ」
創大生よ。皆が創立者たれ! 皆が永遠の開拓者たれ!と、伸一は、心で叫びながら、メンバーに訴えるのであった。