【第2回】 悩みと向き合う (2012.2.15/16/17) ㊦
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──悪い出来事が重なると、「ついてない。運が悪い」などと、嘆いてしまうものですが……。
名誉会長 そういう時こそ、強気でいくんです。魔という働きは、こちらの命が「困ったな。まいったな」と弱気になると、どんどん付け込んでくる。
題目を朗々と唱え、「さあ、かかってこい」と迎え撃てば、必ず退散していくんです。
大文豪ゲーテも、若き日は恋に悩み、就職に悩み、仕事に悩みました。就職難や不安定な雇用などに悩み苦しむ今の青年世代と同じく、青春の課題に挑戦し、苦労したことは全く変わりません。
そして、病気に悩み、5人の子ども全員を自分より早く亡くすなど、家庭のことでも苦悩しました。
しかしゲーテは、何があっても「生き生きと」生きた。
生きて生きて、生き抜いて、大文豪は、悩みさえも創造の源泉として、あれほどの壮大な偉業を成し遂げました。
人間は、うんと悩みながらも、「生き生きと」生きられるのです。苦労の連続であっても、張り切って、今なすべきことに全力で取り組み、自分でなければできない、価値を創造していけるのです。
ゲーテは言います。
「快活さとまっすぐな心があれ 最終的にはうまくゆく」
いわんや、皆さんは妙法という最高の「絶対勝利の信仰」を持《たも》つことができた。
快活に生きることだ。真っすぐに生きることだ。青年ならば!
──池田先生は、「苦をば苦とさとり楽をば楽とひらき苦楽ともに思い合せて南無妙法蓮華経とうちとな(唱)へゐ(居)させ給へ」(同1143ページ)との御文を引かれ、題目に勝るものはないことを何度も教えてくださいました。
名誉会長 「苦をば苦とさとり」──なんと深い仰せでしょうか。生きている以上、苦しみは避けられないのだから、そう覚悟して、悩みを見下ろしていきなさいと励ましてくださっています。
いかなる現象も、信心の眼《まなこ》から見れば、自身の成長の因にしていける。そして、一つ一つ眼前の壁を打ち破りながら、境涯を開き、福運を積んでいけるのです。
「楽をば楽とひらき」とは、ありがたいな、うれしいなと喜びを見つけ、感謝していく心でもありましょう。
どんな状況でも、そこに喜びを見出せる人、感謝できる人は、幸福です。人生の「楽」を自他共に広げていけるからです。
青年は「苦楽ともに思い合せて」題目を唱えながら、何ものも恐れず、前進していくことです。
「厳しい闘いが、私たちをはがね(鋼)のように強くしたのです」と。《()内は編集部注》
わが創価の青年たちも、試練の闘争の中で、金剛不壊の生命を鍛え上げていただきたい。
──折伏していると、友人に「悩みがないから、信心する必要を感じない」と言われることがあります。「とりあえず今、生きていけるから悩む必要がない」と。
青年の意識調査を見てみると、2割近くが「悩みや心配事はない」と答えています。
名誉会長 しかし、ひとたび目を転ずれば、社会には、悩みや心配事が渦巻いています。その苦悩を見つめながら、青年らしく真摯に胸襟を開いて、対話を深めていってもらいたいのです。これが「立正安国論」で示された対話の実践だからです。
御書には、「今の乱れた世にあっては、これということがなくても仏道を求める心が起こることは当然である」(1083ページ、通解)と述べられ、社会の混乱を嘆く人々の姿が記されています。現代の様相にも通じます。
最も鋭敏であるべき青年が「今さえよければ」と安住しているようでは、未来は暗い。
青年に希望と勇気を贈るのは、青年です。
青年が青年に、哲学を、理想を、確信を語る。人間が持つ偉大な力を語り合う。これが折伏です。これこそ、人のためになり、自分のためになり、そして、共々に成長して、世の中に活力を漲らせていく、最も偉大な対話なのです。
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──昨年末、先生が私たちに贈ってくださった一首があります。
「いやまして
広布の山を
登りゆけ
自身の力は
無限の仏力《ちから》と」
いよいよ、無限の仏力を発揮しながら、各地での座談会や青年セミナー等を元気に進め、人材の連帯を大きく広げていきます。
名誉会長 うれしいね。皆、本当によく頑張ってくれている。
愛する君たちに、命をかけて広布大願に生き抜かれた恩師の師子吼を贈ります。
「私は天空に届くほど、広宣流布をしたいという大煩悩の炎を燃え上がらせている。
青年もかくあれ!」
※ヒルティの言葉は氷上英廣訳「幸福論I」、『ヒルティ著作集1』所収(白水社)。ゲ一テの言葉は内藤道雄訳「格言風に」、『ゲーテ全集1』所収(潮出版社)。マンデラの言葉は浜谷喜美子訳『ネルソン・マンデラ 闘いはわが人生』(三一書房)。