小説「新・人間革命」 薫風 56 2012年4月3日

五月二十六日の午後五時過ぎからは、佐賀県創価学会の広布功労者追善法要が、山本伸一の導師で、厳粛に営まれた。
引き続き彼は、県幹部ら十人ほどとの懇談会に出席した。佐賀市内の学会員が経営する食事処で、夕食を共にしながらの語らいであった。
伸一は、メガネをかけた婦人に笑みを向けた。県婦人部長になった酒田一枝である。
「新しい婦人部長が誕生し、佐賀の未来が楽しみです。新しい時代を開いてください。
まだ戸惑いもあるでしょうが、学会の人事は、すべて広宣流布のためです。
人事を進める側としては、個人の事情を考慮し、あらゆる角度から、慎重に検討していかなければなりません。
でも、人事を受ける側の心構えとしては、仏意仏勅であるととらえて、なんでも引き受けていこうという姿勢が大事なんです。
戸田先生は、学会の会長がいかに重責であるかを痛感しておられた。それゆえに、会長に就任することを逡巡され続けた。
先生は、ご自身の事業が、行き詰まった時、『立つべき時に立たなかったからだ』と猛反省されているんです。
覚悟を決めて、広宣流布に走るんです。大変であっても、そこに、宿命の転換と真実の幸福の大道があるんです」
そして、婦人部の県指導部長になった永井福子に言った。
「永井さんも、よく頑張ってくれた。しかし、本当に大事なのはこれからなんです。
後任の幹部が、存分に力を発揮していけるかどうかは、前任者の責任です。どれだけ、後任の人を守り、応援できるかです。
そして、佐賀県創価学会が大前進できたら、皆に、『酒田婦人部長が立派だからです』と言って、讃え抜いていくんです。
あなたに、その度量があれば、佐賀は大発展します。誰も見ていなくとも御本尊は、すべてご存じです。私も、じっと見ています。
陰の力として頑張り抜き、勝利した功徳、福運は無量無辺です。それが仏法です」