2012-04-08から1日間の記事一覧

小説「新・人間革命」 薫風 60 2012年4月7日

佐賀から熊本に向かう五月二十七日も、山本伸一は、朝から激励のため、色紙などに筆を走らせた。 そして、早めに昼食をすますと、佐賀文化会館のロビーに出た。 県長の中森富夫の両親や、県指導部長になった永井福子の母親らと、会うことにしていたのである…

小説「新・人間革命」 薫風 59 2012年4月6日

山本伸一の散髪をしている緒高武士の傍らには、妻の紗智子が立っていた。 彼女は、次々と、伸一に報告していった。 ──以前は病に苦しみ、二度も大手術をしたが、一九五九年(昭和三十四年)に入会して以来、次第に健康を回復していったこと。 主人は、戦時中…

小説「新・人間革命」 薫風 58 2012年4月5日

懇談会のあと、山本伸一が向かったのは、学会員が営む緒高理容店であった。 彼は、店主の夫人である緒高紗智子との約束を果たそうと、訪れたのである。 ──三日前、緒高紗智子は、北九州市に下宿して大学に通う長男と、北九州文化会館の見学に行った。 その時…

小説「新・人間革命」 薫風 57 2012年4月4日

山本伸一は、この県幹部との懇談会でも、盛んに青年との対話に努めた。 彼は、テーブルの隅に座っていた、県男子部長の飯坂貞吉に声をかけた。 そして、飯坂から、若くして両親を亡くしていることや、経済的な事情から大学進学を断念せざるを得なかったこと…

小説「新・人間革命」 薫風 56 2012年4月3日

五月二十六日の午後五時過ぎからは、佐賀県創価学会の広布功労者追善法要が、山本伸一の導師で、厳粛に営まれた。 引き続き彼は、県幹部ら十人ほどとの懇談会に出席した。佐賀市内の学会員が経営する食事処で、夕食を共にしながらの語らいであった。 伸一は…

小説「新・人間革命」 薫風 55 2012年4月2日

山本伸一は、徳永明と妻の竹代に、力を込めて訴えた。 「大聖人は、『南無妙法蓮華経は師子吼の如し・いかなる病さは(障)りをなすべきや』(御書一一二四㌻)と断言されている。 何があっても、悠々と題目を唱え抜き、信心の炎を燃やし続けていくならば、…

小説「新・人間革命」 薫風 54 2012年 3月31日

徳永明は、二十六日、佐賀文化会館の開館記念勤行会終了後に行われる、記念植樹の役員に就いた。 彼は、文化会館の庭にある楠の前で、植樹用のシャベルを手に立っていた。 そこに山本伸一が姿を現した。 「どうもご苦労様! さあ、植樹をしよう」 徳永は、『…

小説「新・人間革命」 薫風 53 2012年 3月30日

山本伸一の佐賀県訪問の三日前、外出から戻ってきた徳永竹代は、息を弾ませながら、夫の明に告げた。 「よかもん、あったよ! 贈答品販売店の店頭に、師子の像があったよ!」 翌日、徳永明は、その店を訪ね、店員に、師子の像を購入したいと語った。 店員の…

小説「新・人間革命」 薫風 52 2012年 3月29日

輸送班のメンバーが九州総合研修所から帰って行ったあと、山本伸一と峯子は、勤行の折に、徳永明の妻・竹代の平癒を祈った。 日蓮大聖人は、「病によりて道心はをこり候なり」(御書一四八〇ページ)と仰せである。 “さらに、強盛な信心を奮い起こし、見事に…

小説「新・人間革命」 薫風 51 2012年 3月28日

山本伸一の質問に男子部の幹部が答えた。 「テントに残り続けていたのは、佐賀県の輸送班です!」 「そうか。意気盛んだな。しかし、少しでも危険な状況になったら、無理をしないで、すぐに避難することも大事だよ。 研修、訓練といっても、絶対無事故が鉄則…

小説「新・人間革命」 薫風 50 2012年 3月27日

佐賀文化会館の開館記念勤行会のあと、山本伸一は庭に出た。開館を記念して楠の記念植樹などを行うためである。 皆が真心を込めて作った、満開の造花の桜が微笑んでいた。 伸一は、外にいた人たちに声をかけながら庭を一巡し、師子の像の前で足を止めた。 「…

小説「新・人間革命」 薫風49 2012年 3月26日

温厚で生真面目な性格である県長の中森富夫を中心に、佐賀県創価学会は、和気あいあいと、広宣流布の堅実な前進を続けてきた。 山本伸一は、佐賀県がさらに大飛躍を遂げていくためには、若い人材を登用し、新しい原動力としていく必要があると考えていた。 …

小説「新・人間革命」 薫風48 2012年 3月24日

県長の中森富夫は、しばらく困惑した顔でいたが、意を決したように言った。 「では、山本先生をお迎えした喜びを託して、『春が来た』を歌います。 春が来た 春が来た どこに来た……」 中森は、直立不動で熱唱し始めた。 歌い方にも、生真面目さ、一途さがあ…

小説「新・人間革命」 薫風47 2012年 3月23日

佐賀文化会館の懇談会で、山本伸一は、皆に言った。 「みんな、本当によく頑張ってくれたね。 さあ、また、新しい旅立ちだ。一緒に、広宣流布の歴史を創っていこうよ。 二十年後に、佐賀県創価学会が大勝利しているならば、今日、ここに集まったことが、二十…

小説「新・人間革命」 薫風46 2012年 3月22日

山本伸一は、遠路、自分を訪ねて来た酒田英吉に、『信心に励むうえで、最も大切なものは何か』を語っておこうと思った。 「酒田君。信心の極意は、『師弟不二』にあるんだよ。 戸田先生は、不世出の、希有の大指導者だ。先生の一念は、広宣流布に貫かれてい…

小説「新・人間革命」 薫風45 2012年 3月21日

山本伸一は、さらに力を込めて、目の不自由な婦人に訴えていった。 「あなたは、自分も幸せになり、人びとも幸せにしていく使命をもって生まれた地涌の菩薩なんです。仏なんです。 一切の苦悩は、それを乗り越えて、仏法の真実を証明していくために、あえて…