小説「新・人間革命」 人材城 13 2012年 4月24日

山本伸一は、場内を見渡しながら語った。
「健康は、基本的には、自分で守り、自分で管理するしかありません。
最終的には、自己責任です。自分の体のことを、いちばんよくわかるのは、自分であるともいえます。
健康を創造することは、自身の人生の価値を創造することにつながります。
しかし、健康に留意していても、生身の人間ですから、一定の年齢になると、誰でも体のどこかに故障が出てくるものです。
そうした場合には、さらに体調管理に努め、よく休養をとりながら、長寿の人生を全うしていただきたい。
また、『無理をしても、信心しているんだから……』という安易な考えで、非常識な行動をし、生活のリズムを崩し、体を壊すようなことがあっては、絶対になりません」
最後に、伸一は、「皆さんのご健康、ご長寿を、毎日、妻と共にご祈念申し上げております」と述べ、あいさつを結んだ。
話のあと、皆のために何曲もピアノを弾いた。ピロティでは、男子部の役員や高齢者、子どもらと、次々に言葉を交わし、記念のカメラに納まっていった。
全国、全世界、どこへ行っても、伸一の行動は変わらなかった。
ただ、ただ、人と会い、人を励ます。力の限り、命の限り、全精魂を注いで励ます。
そして、人びとの心に、希望の光を送り、勇気の火をともす──そのために、自分にできることはなんでもした。
『皆には、少しでも休んでもらおう。その分、私が働こう。常在戦場のわが人生だ!』
というのが伸一の覚悟であった。
学会歌の指揮も執った。何百人と握手も交わした。手はしびれ、指は感触を失った。山と積まれた色紙や書籍に揮毫もした。
腕が疲れ、あがらなくなったこともあった。
記念撮影も数知れなかった。フラッシュを浴び続けたためか、目もいためた。
そうせずしては、全国、全世界に広がった一千万人になんなんとする同志と、心を結び合えるわけがない。