小説「新・人間革命」 人材城 16 2012年 4月27日

山本伸一は、本部長の坂上良江から、三角のメンバーの話を聞くと、彼女に言った。
「三角の同志と私は、お会いできなくとも、心は一緒です。私は、三角のことを忘れません。
私の一念に、深く刻まれています。また、皆さんの心には、私がいます。
私と一緒に、広宣流布への決意を新たにし、頑張ろうとしてくれている。それは、日々、私と、心で対話していることです。
私と戸田先生もそうです。毎日、常に、心で戸田先生と対話しながら戦っています。私の心には、いつも、先生がいらっしゃる。
私の基準は、御書であり、それを実際に身で読まれ、実践されてきた戸田先生です。
『こういう時、先生ならどうされるか』『自分の今日の行動は、先生のご精神にかなったものであるのか』『先生が今の自分を見たら、喜ばれるか、悲しまれるか』
そして、『必ず、先生にお喜びいただける勝利の戦いをしよう』と、自分を鼓舞してきたんです。それが、私の勇気の源泉です。常勝の原動力なんです」
師弟不二とは、師の心をわが心として生きることであり、いつ、いかなる時も、己心に厳として師匠がいることから始まる。
いくら『師弟の道』を叫んでいても、自分の心に師匠がいなければ、もはや、仏法ではない。
師匠を、『自分の心の外にいる存在』ととらえれば、師の振る舞いも、指導も、自身の内面的な規範とはならない。
そして、師匠が自分をどう見ているかという、師の『目』や『評価』が行動の基準となってしまう。
そうなると、『師匠が厳しく言うから頑張るが、折あらば手を抜こう』という要領主義に堕していくことになりかねない。
そこには、自己の信心の深化もなければ、人間革命もない。
もしも、幹部がそうなってしまえば、仏法の精神は消え失せ、清浄なる信仰の世界も、利害や打算の世法の世界になってしまう。
己心に、師弟不二の大道を確立するなかにこそ、令法久住がある。