小説「新・人間革命」 2012年 6月4日 人材城47

山本伸一熊本県の代表メンバーとの懇談会は、既に二時間近くが経過し、午後七時を回っていた。
伸一は、もっと皆と語り合いたかったが、懇談会を終了することにした。参加者は、県内各地から集って来ているため、遠い人は、帰宅するのに三時間ほどかかってしまう。
しかも、女子部や婦人部もいたからである。
懇談会のあとも伸一は、二十一世紀のリーダーとなる、乃木辰志ら学生部のメンバーと、さらに語らいを重ねた。彼らは、比較的、住まいも近かった。
伸一は、乃木に言った。
「お父さんについては、あなたが題目を送ってあげればいいんです。そして、立派な医師になることです。それが折伏なんです。
ところで、君とお母さんは、どちらが先に信心をしたの?」
「母です。母の熱意に負けて、四年前、大学に入る時に、実家のある東京で入会しました。今では、母に感謝しています」
乃木の母は、一九五九年(昭和三十四年)に入会した。また、父は台湾出身で、飲食店等を経営していた。両親は夫婦喧嘩が絶えなかった。それを見かねた隣人の学会員から、仏法の話を聞かされたのである。
しかし、母が信心を始めると、父は、「日本の宗教に凝るなど、とんでもない!」と、憎悪を露にした。一家和楽を願い、入会したにもかかわらず、夫婦喧嘩は、かえって激しくなってしまった。
辰志は、思春期を迎えたころには、?両親の仲が悪いのは、母さんが創価学会に入ったせいだ?と思うようになっていた。だから母親から、一緒に信心するように言われても、耳を貸さなかった。
しかし、?母は、あれほど反対されながら、なぜ、信心をやめないのか?という疑問が、次第に膨らんでいった。
辰志は、?この信心には、何かある!?と感じ始めた。仏法の正義を最も雄弁に語るのは、屈することなき信念の輝きである。