小説「新・人間革命」厚田 37  2012年7月28日

飯野夫妻が、「聖教新聞」の運搬を買って出てくれたことによって、その日のうちに、厚田村浜益村の同志の手に、新聞が届くようになったのである。
村の同志にとって、それが、どれほど、大きな励みとなり、勇気となっていったか、計り知れないものがある。
学会活動のなかには、人の目にはつきにくい、光の当たらない地味な活動もある。皆がなるべく避けたいと思う労作業もある。
しかし、皆が嫌がり、なかなかやろうとしないことも、『広宣流布のためには、なんでもやらせていただこう』と、勇んで引き受けてくれる人こそ、創価の真の英雄といえる。
山本伸一は、各地を巡りながら、『誰が陰で最も苦労し、この組織を支えてくださっているのか』を、じっと洞察し、見極めてきた。
組織を一本の果樹とするなら、彼の視線は、花や果実を支える枝や幹、そして、根に、向けられていたといってよい。
特に、地中に埋もれ、目には見えないところで、黙々と活動に励み、同志を支えてくれている、学会の根っこともいうべき人たちに、光を当てようとしてきたのである。
幹部は、『誰が陰の力として学会を守り、支えてくれているのか』を見極め、深く感謝し、最大に賞讃していかなければならない。
そこに、創価学会の永遠の繁栄もあるのだ。
山本伸一は、飯野夫妻が営む喫茶店「厚田川」で、飯野チヨが入れたコーヒーを飲みながら語った。
広宣流布のために、苦労したことは、すべて自分の福運になります。
そして、必ずいつか、それが実感できるものなんです。だから、勇んで仏法のため、友のために、苦労していくことが大事なんです。
それにしても、このコーヒーはおいしい。戸田先生にも飲んでいただきたかったな」
そして、用意していた色紙に句を認めて、夫妻に贈った。
「厚田川 香りも高き 師の都」