小説「新・人間革命」 2013年 1月29日 法旗47

東京から来た婦人の幹部は、さらに力を込めて、岩田サワに訴えた。
 「岩田さん。宿命を打開する直道は折伏ですよ。人の幸せを願い、法を説くならば、自分に、仏・菩薩の大生命が涌現します。
 その生命力で、宿命も転換し、病も乗り越えていくことができるんです。あなたも一緒に、折伏・弘教に励みましょうよ」
 岩田は、確信にあふれた、この婦人の話を聞くうちに、?よし、それならば、この信心にかけてみよう?と決意した。
 翌日は、朝から弘教に歩いた。午後になった。?発熱する?と思った。
 しかし、熱は出なかった。翌日も、そのまた翌日も、発熱はなく、以来、熱は出なくなった。
 病院の医師も、「何か別の薬を飲んだのかね」と尋ねるほどだった。
 それが岩田の感じた初信の功徳であった。確信が湧いた。?信心を根本にしていくならば、必ず病気は乗り越えられる?と思った。
 また、友の幸せを願って仏法を語ると、こんなにも歓喜し、生命が躍動するのかという実感をもった。
 自分が病身であることさえ忘れ、活動に励んだ。実際に、発熱だけでなく、咳や痰などの症状もなくなっていった。
 一九五六年(昭和三十一年)五月のことだ。第二代会長・戸田城聖が高知に来ると聞いて、岩田は訪ねて行った。
 戸田は、「松山から、よく来たな」と言って、じっと、彼女に視線を注ぎ、言葉をついだ。
 「私たちは、なんのために生まれてきたのか。それは、幸せになるためだ。あなたも、きっと幸せになるんだよ。
 いや、必ずなれる! 御本尊から、学会から、生涯、離れてはいけないよ」
 岩田は、自分の幸せを願ってくれる戸田の慈愛に、胸が熱くなった。?頑張ろう! 絶対に幸せになろう!?と、自分に言い聞かせながら、家路を急いだ。
 苦悩し、呻吟する庶民の心に、誰が希望の光を注ぐのか。誰が勇気の火をともすのか──その使命を担ってきたのが創価学会である。