小説「新・人間革命」 2013年 1月28日 法旗46

 岩田サワは、仏法は信じられなかったが、自分に信心を教えてくれた友人の真心と熱心さには、感動を覚えた。〝この人を信じてついていこう!〟と決めて、大阪から松山に帰って来たのである。
 信心の根本は、どこまでも妙法への確信にある。
 しかし、人は、人によって目覚め、人について来るのである。
 日蓮大聖人は、「法自ら弘まらず人・法を弘むる故に人法ともに尊し」(御書八五六㌻)と仰せになっている。
 ゆえに、法を弘める人の人格、振る舞いが大事になってくるのである。
 岩田に弘教した友人は、毎月二回は、大阪から、指導、激励に通い、勤行や教学を教えてくれた。
 また、その友人は、松山に知り合いも多く、来るたびに弘教に歩き、入会する人も出始めた。
 ほどなく岩田の娘の紀美子も信心し、岩田が知る松山の同志は、十一世帯になっていた。
 皆で集まって、大阪から送られてきた「聖教新聞」や、先輩幹部からの励ましの手紙などを読み合う座談会も開かれ始めた。
 そのころ、岩田の病状は、既に回復に向かい、外出も許可されていたが、午後になると決まって高熱が出た。
 入会した翌年の一九五五年(昭和三十年)の夏季地方指導で、東京と大阪から数人の幹部が松山に来た。
 そして、岩田の家にも激励に訪れたのである。
 東京から来た婦人の幹部は、岩田が病に苦しんでいることを聞くと、「一緒に勤行しましょう」と言って、真剣に、朗々と、読経・唱題した。
 それから、諄々と語り始めた。
 「大事なのは確信です。〝信心によって、絶対に病を乗り越えてみせる!〟と誓い、師子が吼えるような題目を唱えるんです。
 大聖人は『南無妙法蓮華経は師子吼の如し・いかなる病さは(障)りをなすべきや』(同一一二四㌻)と仰せになっています。
 信心で勝つんです。その確信があれば、服用した薬も最大の効果を発揮しますよ」