小説「新・人間革命」 勇将 11 2013年 2月25日

懇談会では、「学会の組織では世代の交代が進み、私も若くして幹部に登用していただきました。
経験豊富な指導部の先輩などに、どういう姿勢で接していけばよいでしょうか」という、婦人部幹部からの質問もあった。
 山本伸一は、微笑みながら語り始めた。
 「組織を担ううえで、大事な質問です。
 まず、何かを決める場合には、『どうでしょうか』と、先輩たちの意見を聞いていくことです。
 先輩たちが、無視されているように感じ、寂しい思いをいだくようになってしまえば、団結はできません。
 そのうえで、『私は、こう考えておりますが、先輩の目から見て、アドバイスがありましたら教えてください』と、先輩の意見を尊重していくことです。
 さらに、個人的にお会いして、『私について、何かお感じのことがありましたら、遠慮なさらずにご指摘ください』と言っていく謙虚さが大事です。
 そして、活動でよい結果を出せた時には、『おかげさまで勝利を飾ることができました』と、賞讃していくんです。
 口先だけでなく、心からです。
 指導部の先輩に限らず、かつて自分の面倒をみてくれた人や、一緒に戦った友人も、たくさんいるでしょう。
 役職的に、立場が上になったからといって、自分が偉いように思い、
 そうした方々に対する尊敬の心を失い、横柄な態度をとるようなことがあっては、絶対になりません。
 それでは、自らの愚かさ、人間としての浅薄さを証明しているようなものです。友人も離れていき、孤独になるだけです。
 『私は、時を得てリーダーに選ばれたが、私以上に実力のある人がたくさんいる?という考えに立つことです。
 要は、自分が接してきた同志を大切にし、好かれる人になることです。実は、それが名リーダーの大切な要件の一つなんです」
 伸一は、どの質問にも真剣に答えた。時には、自分の体験も披瀝した。忌憚ない語らいこそ、前進の原動力である。